日本IBMは10月26日、都内で記者会見を開き、ニトリホールディングスの基幹データベースシステムにIBM POWER9プロセッサ搭載エンタープライズサーバ「IBM Power System E980 server」とオールフラッシュストレージ「IBM DS8886F」が採用されたと発表した。Power System E980は今回が国内出荷第一号となる。

冒頭、日本IBM 常務執行役員 ハードウェア事業本部長の朝海孝氏は「POWER6プロセッサ以前はメインフレーム事業はZシリーズとPOWERシリーズの開発部門を分けていたが、POWER6世代から2つの開発チームの技術交流を図り、シナジーを強めた。その結果、Zはハイパフォーマンスとなった一方で、POWERは信頼性を高めた」とPOWERプロセッサの歩みを振り返った。

  • 日本IBM 常務執行役員 ハードウェア事業本部長の朝海孝氏

    日本IBM 常務執行役員 ハードウェア事業本部長の朝海孝氏

その後、IBM Watsonを搭載したPOWER7(2010年)が米クイズ番組のチャンピオンに勝利し、POWER8(2014~2016年)はNVIDIA NVLinkを統合し、AIワークロードに対応。そして、POWER9(2017~)では現時点で世界最高速の米国製スパコン「Summit」に採用されていることに加え、NVIDIA NVLink2および、PCI Express 4.0に対応している。

  • POWER9プロセッサのチップ

    POWER9プロセッサのチップ

続いて、ニトリホールディングス 情報システム改革室 ICTインフラ戦略担当ディレクターの荒井俊典氏が登壇氏、Power System E980を導入した経緯について説明した。

  • ニトリホールディングス 情報システム改革室 ICTインフラ戦略担当ディレクターの荒井俊典氏

    ニトリホールディングス 情報システム改革室 ICTインフラ戦略担当ディレクターの荒井俊典氏

同社のITシステムは自前で調達しており、1999年から販売・SCMシステムはフルスクラッチで構築し、ステップ数は1578万ステップ、主要6システム、84システムが稼働しており、1日あたり10件ほどリリースしている。同氏が所属する情報システム改革室は札幌・東京に2拠点を展開し、東京では上流工程や大型プロジェクト、札幌では開発・運用をそれぞれ担っている。

同社の基幹インフラの考え方としては、家具などの製造から物流、500を超える店舗・本部業務まですべてを支え、計画メンテナンス時間の極小化を図る「高い信頼性」、膨大なトランザクションの高速処理、基幹と拠点・周辺システムとの高速な連携、将来的なビジネス成長やシステム拡張・刷新・機能追加・新技術への追従をはじめとした「高性能・拡張性」、本番業務と新業務・機能を検証・実行する環境の両立、複数世代のシステムが稼働できる高い互換性などの「柔軟性・運用性」の3つがポイントだという。

  • ニトリホールディングスの基幹インフラの考え方

    ニトリホールディングスの基幹インフラの考え方

荒井氏は「家具の販売システムにおけるオンライン処理の場合では、大型家具は店舗に在庫がなく、海外工場・輸入をはじめとしたサプライチェーンから顧客に配送するトラックのルートなどを瞬時に算出する必要があり、1秒以内に求められるトランザクションだ。仮にシステム停止が発生した場合、全店舗における家具販売のストップを意味し、高い可用性が求められる」と話す。

同社は、2007年までOracle Databaseを30台以上で分散処理(IA)していたが、2008年にPOWER6を導入し、分散したサーバを集約化。2013年にはPOWER7プロセッサ搭載の「IBM Power 770」を導入し、Oracle DB 10gおよび11gを筐体ないで統合し、ストレージ「DS8870」で高速化を図った。そして今回、新しい基幹システムにリプレイスするためPower System E980を採用することになった。

同社では、今回の基幹DBシステムの評価ポイントとして3点挙げている。まずは2007年以降の安定した稼働実績(大規模障害は0件)と、柔軟かつ余裕度を持つスケールアップ可能なアーキテクチャだという。例えば、スクラッチで新システムを開発している際に新しいアプリケーション立ち上げると、突発的な負荷が発生する。しかし、同社がDBでチューニングするまでには、リソースを負荷が発生するインスタンスに動的に振り分けることを可能としている。

  • 基幹DBシステムの評価ポイント(1)

    基幹DBシステムの評価ポイント(1)

2点目は、事業継続性を最大化しつつ安心・安全・確実なデータ移行。同社はRFP(提案依頼書)において同社の10TBのDBを3時間以内に移行する要件を提示(年末年始に実施予定)しており、確実に実施可能なアーキテクチャを評価。また、移行に際してはストレージのコピー機能を活用し、これまでは顧客情報のマスキング時に開発が使えないことがあったが、今回は開発環境と本番環境の間にマスキンキング用の断面を使うため、開発を止めずに移行できるとしている。

  • 基幹DBシステムの評価ポイント(2)

    基幹DBシステムの評価ポイント(2)

そして、最後は今後5年で予想されるシステム変革を予見した具体的な提案としている。同社では、フェーズ1(2018年末)は基本アーキテクチャを変更せずに仮想イメージごと移行し、ビジネス成長に適用させ、フェーズ2(2019年)で店舗サーバの集約・統合化を実施。フェーズ3(2020年)ではOracle DBの保守切れに伴うマイグレーション対応、フェーズ4(2021年~)において基幹システムの刷新を検討し、それぞれのフェーズで具体的な提案を受けているという。

  • 基幹DBシステムの評価ポイント(3)

    基幹DBシステムの評価ポイント(3)