波々伯部商店の場合 - 「クラフトビール&地酒」

波々伯部(ほほかべ)商店(販売事業者名:マルホ酒店)は明治末期創業の家族経営の酒店で、しばらくはナショナルブランドのビール・日本酒を中心に販売を手がけていた。

  • 波々伯部商店の外観

    波々伯部商店の外観

大学卒業を気に波々伯部商店 取締役 波々伯部広章氏は家業を継ぐことを決意。代替わり当初は日本酒の専門店を想定していたが、とあるニュース記事を波々伯部氏は目にし、これまでの考え方が変わる。それは「100年後に世界を代表するビール会社」をコンセプトに、新しくクラフトビールの醸造所をスタートさせたベンチャー企業についての記事だったという。

  • 波々伯部商店 取締役 波々伯部広章氏

    波々伯部商店 取締役 波々伯部広章氏

当初、同氏はクラフトビールに対する知識がそれほどなかったが、その会社のクラフトビールを口にした際に感動を覚え、それを周りに伝えていければという思いに加え、比較的クラフトビールの参入障壁が低く、その中でリーダーシップをとれるのではないかと判断し、先行してクラフトビールの販売に注力することに舵を切った。しかし、新規事業ということもあり、課題もあったようだ。

波々伯部氏は「クラフトビールの賞味期限は製造から平均90日と短く、粗利は約20%のため収益の確保が難しかった。さらに、それまではキリンやアサヒなどのナショナルビールだけを取り扱っていた酒店が、突然クラフトビールを陳列しても誰も知らないため、購買につながらないこともあった。そのため、Facebookページの立ち上げや店舗内でクラフトビールと食事のペアリングイベントなど開催したが、大規模ではないことから、劇的な顧客の獲得には時間を要していた」と、当時の悪戦苦闘を回顧する。

そのような状況の中、スムーズに在庫を回転することできないかと考え、ECに目を付けたわけだ。付加価値が高く、成長が見込めるクラフトビールと地酒に主力商品を切り替えつつ、2015年2月にAmazonマーケットプレイスで出品を開始(利用中のサービスはAmazon出品サービス、スポンサープロダクト広告)した。

ECは単なる販売だけではなく、顧客とのアプローチツールとなり、実店舗にも来店するようになるなど、相乗効果も生み出したという。また、クラフトビールのギフトセットは多くなかったためセット販売に注力し、お中元・お歳暮のほか、父の日という新たなビジネス機会の創出にもつながっているという。

  • 好評を博したという父の日セット

    好評を博したという父の日セット

結果として、売り上げの目算も立ち、在庫も回転するようになり、事業が好調に推移したことから、丸中と同様に10月17日になんばスカイオへの出店が決定している。これを機に、クラフトビールと地酒、地方産品を同時に楽しめる店舗として運営していく考えだ。

FIX ITの場合 - 「プロテイン&サプリメント」

FIX IT(販売事業社名:FIX IT-Direct)は2017年3月に設立し、プロテイン、サプリメント、フィットネス器具の製造からオンライン販売を手がけている。同社 執行役員の福田隆法氏は同社のECを手がける前は、親会社であるG.OホールディングスでコスメティックのEC事業を担当していた。

  • FIX IT 執行役員の福田隆法氏

    FIX IT 執行役員の福田隆法氏

同社の製品は2017年4月からAmazonマーケットプレイスで出品をスタート(利用中のサービスはAmazon出品サービス、FBA、スポンサープロダクト広告)。福田氏は同社のプロテインについて「従来のプロテインではなく、おいしさとパッケージにこだわりを持っている」と語る。

そう話すように、通常のプロテインであれば約200ml~250ml水を加えなければならないが、一気に飲み干すのに苦労することがあるため、100~150ml程度で溶かしてもおいしく飲める製品を目指し、味はプレーン、バニラ、ストロベリーなどを揃えている。

また、パッケージデザインは同氏が手がけたものだ。福田氏は「日本的なデザインで部屋に置いても違和感がないものにしようと考えた」と説明する。これまでデザインを専門的に勉強したことがなく、ECをスタートさせる前はパソコンに触れる機会さえ少なかったが、独学でスキルを身に付け、オンライン販売は自由度が高いため、自分が作りたいものを作ったという。

  • FIX ITのプロテイン

    FIX ITのプロテイン

マーケットプレイスを活用した素直な感想として福田氏「Amazonの強みは広告のデータが細かく把握し、分析することが特徴だ。例えば、広告で変更を加える際に施策に対して、なにが不足しているのか分かりやすくなっている。また、6:4の比率で女性の購入者が多いが、男性層へのアプローチが有効だと感じた」と話す。

また、データの活用としては、商品を売り始めた時期から売り上げデータを分析しているため、アクセス数に応じた売り上げの予測が可能になったほか、過去データが活用できることは利便性が高いという。

一方、販促では移り変わりが予想以上に早いため、過去に好評だった施策を進めても売り上げにはつながらないがあることから、規模が大きい市場に対しては他社とは違う施策や広告などに投資することで、チャレンジしているという。

福田氏は「今後はスポーツ用品店への販売拡大やスポーツ系の選手にフィットする商品作りに積極的に取り組む」と、展望を述べていた。