「働き方改革関連法案」の変更のポイントを整理したところで、同法案に対し、経営者、人事・労務・総務部門、マネジャーがとるべき対策を紹介しよう。

経営者がすべきこと

企業の経営者、役員においては、「体制作り」「規定・システム・業務の見直しと予算取り」「関係者への周知」が求められる。

体制としては、社長や人事本部長が主体となり、タスクフォース・専門家招集・推進体制・必要会議体を組成するとよいという。そして、関係者を巻き込んで、人事制度、システム、内規の変更を推進していくことが、制度の致命的な抜け漏れ防止と関係者の当事者意識の醸成につながるとのことだ。

具体的には、最初の1カ月で影響調査を実施し、弁護士、会計士、社労士、産業医などと検討を重ね、規則・システムにおける要件に落としていくことが求められる。

体制ができ、タスクフォース・専門家による影響調査が終わったら、実業務を推進する。

就労規則をはじめとした社内規定の変更は、関連監督庁への報告義務を伴うため、早めの対応が求められる。残業時間の見直しは、勤怠管理のシステムに大きな影響を及ぼすため、システムの開発が施行に間に合わない場合に備え、IT部門や外部の開発会社と十分な余裕をもったプロジェクトマネジメント、開発が間に合わなかった場合のワークアラウンド(代替手段)の検討を進める必要がある。

そして、タスクフォースの関係者で合意したことを定期的に関係者に共有していく。法令順守という前提だけでなく、社員一人ひとりの働き方を改善するためのプロジェクト、という大義を伝えていくことが大切だという。

人事・労務・総務部門がすべきこと

人事・労務・総務部門は、経営者とともに、法案対応のための体制構築に取り組む必要がある。

続いて、先行事例の研究を行うとよい。大手企業は、働き方改革関連法案成立前から推進活動を進めていることから、専門メディアや専門家を通じて先行事例を学び、専門事例から自社にあった形で制度設計を進めていくことが推奨される。

経営層と共に、「規定・システム・業務の見直しと予算取り」「関係者への周知」を進めていくことに加え、ドキュメントや制度の整備を行っていく必要がある。

ドキュメント制度の整備については、コンサルティングファームに依頼し、大きなタスクフォースと専門家チームを作り、推進することが確実だと考えられるという。これが難しい場合は、専門領域の専門家(弁護士、会計士、社労士、産業医)と密な相談を進めていくことに徹する必要がある。

支援を受けられる専門組織としては、都道府県の労働局、社会保険労務士会、労働問題弁護士ナビが紹介されている。

マネジャーがするべきこと

「働き方改革関連法案」への対応は、経営・人事が主として推進していくプロジェクトが主となるが、現場の法令順守、チーム作り、業務遂行はマネジャーの仕事となる。

経営を中心としたタスクフォースが組成される場合、タスクフォースに積極的に関与することで、現場の声をフィードバックする機会を得ることが可能になる。

また、先行事例からは、現場でどのようにふるまい、チームのパフォーマンスを上げるのかということを学ぶとよいという。

実行段階では、現場のメンバーを巻き込み、働き方改革が各人にとってよりよい生き方・働き方を手に入れるための制度であること、その中で現場業務の改革を進めたいことを伝え、現場を変える気持ちを伝えていくことが必要となる。

なお、働き方改革法案の施行により働き方が大きく変わり、今までのやり方が通用しなくなるため、マネジャーには実務の改革が求められる。

例えば、残業時間が減って業務が回らないのであれば、チームで「やめること」を決めてみる。会議体の見直し(開催目的、頻度、参加者)、報連相の見直し(資料の体裁、報告内容の削減)、オフィスワークやメール文化の一部緩和(チャットツール利用やテレワークの活用など)など、検討すべきことはあるはずだ。