働き方改革に対し政府および企業が注力する中、昨年から注目が集まっているRPA(Robotic Process Automation)。そんな中アバナードは7月25日、RPAに関するロボティクスの概要やツールの原理などの基本的内容、さらには導入事例を用いた最新状況を紹介する説明会を開催した。アバナード は、アクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社だ。
「RPAの原型は2000年頃から提供され始めたテストツールにある」と説明したのは、アバナード グループ マネージャー クライアント エグゼクティブ 保坂清史氏だ。
RPAでは、人が行うデスクトップの操作を自動化できる。具体的には、マウスのクリック、文字入力、コピー&ペースト、画面切り替え、検索・置換などだ。これらの操作の自動化はもともとテストツールで利用されており、これらの派生系として、RPAが生まれてきたという。
RPAでできること
保坂氏は、RPAでできることとしては、「プロセスの自動化」と「システム統合/マッシュアップ」の2つがあると説明した。
プロセス自動化は、複数システムに跨った一連の業務をつなぎ、連携させて自動化するもの。一方のシステム統合/マッシュアップはプロセス自動化の派生系で、独立したシステムのデータをマッチングさせながら、データの移行や統合を行うもので、これまで新たにプログラムを作成しないと対応できなかった領域だ。これらを低価格で実現できるのがRPAのメリットだといい、これまでは、作り込みをして専用のアプリケーションをつくらなければならなかったが、RPAは汎用品として簡単なスクリプトを変更することで転用や組み換えが可能な点がメリットだという。
効果が上がる業務を選択する場合のポイント
RPA化により、効果が上がる業務を選択する場合のポイントとして保坂氏は。「ルール/定義」、「インプット方法」、「データ性質」、「プロセス」、「ボリューム」の5つを挙げた。
「ルール/定義」とは、業務やオペレーションを定型化/ルール化できるかで、個人のPCの中で閉じている報告書作成にとどまらず、それをグラフ化してサイトに自動的にアップするなど、一連の業務として実現できるようにするのが予算化できるポイントだとした。
「インプット方法」では、人の意思、判断、声などを取り入れる必要があるものは向いていないと意味で、「データ性質」は、扱うデータがデジタル化されていると効果が出やすいという。
現在、RPA化したい業務で一番要望が多いのが、手書きデータをOCRでデジタル化して、システムに入力する業務だ。特に銀行や保険会社などの金融業界で発生する手書き伝票を、システムに入力作業を自動化したいというニーズが高い。最近はOCRにAIも活用され始めているが、欧米の言語に比べ、日本語はまだまだOCRのハードルが高く、デジタル化されているデータは、RPAの効果が高いという。
そのほか、例外処理が少なく安定的なプロセスかどうかという「プロセス」や、同じ業務が繰り返され、大量に作業が発生している「ボリューム」も効果を判断するポイントだという。
保坂氏は「簡単で単純な業務を、複数の人が並列してやっている業務が効率が高い」と語る。
ただ日本においては、個別処理を自動化する例が多く、AIを利用して複雑な作業を自動化したり、分析業務を自動化するレベルには達していないという。
RPAの期待効果
RPAの期待効果については、パンチ入力など専門性が低く、大量に発生しているものに関してはすでにシステム化されているため、今後は、専門性が高く、量もそれほど多くないためシステム化しにくい領域、たとえば、複数のExcelシートからひたすらデータをコピー&ペーストして、報告書を作成するといった業務がRPAで救える領域だという。
また、単に生産性を上げるだけではなく、人間がやるとミスが発生する部分を自動化することで人的エラーを削減するなどのほか、個人情報など、セキュリティの高い情報を扱う作業をRPA化することで、情報漏えいのリスクを下げ、コンプライアンスを高める効果も期待できるという。
現在、RPAの利用がもっとも進んでいるのが金融業界で、与信、預金(入出金)、契約書の入力、送金・振込、人事の人の書き換え、購買業務における発注業務、チェック業務でのアラート表示などで利用効果が高いという。
金融以外の業界でRPA化すべき業務としては、まずは財務・経理系で、支払、受注・入金業務、外注管理などで利用でき、製造業では注文書の入力、人事では勤怠管理などがあり、ITでは監視系として複数のツールで管理しているものをマッシュアップして、ネットワークやアプリの監視することに利用できるという。ただ、ITに関しては海外での事例が多く、日本はこれからだという。
RPA導入に向けた進め方
RPA導入に向けた進め方としては、適用すべき業務を分析・診断する「診断フェーズ」、その後、代表的な業務で検証する「パイロットフェース」に進むが、その前に、それを行うあたり環境や技術面で制約がないかを検討する「検証(PoC)フェーズ」があり、パイロットでの結果を踏まえ、それを横展開し拡大していく「実行フェーズ」につなげていく流れだ。
RPAツールは群雄割拠の時代だが、アバナードではエンタープライズ領域で利用できる製品を扱っており、機能的な差は徐々になくなってきているという。保坂氏は、「今後は価格競争になり、徐々に淘汰されていくだろう」と語った。
また、操作を録画し、それを再現できる機能を持つツールが多いので、専門家に頼まなくても自分たちでできると考えがちだが、業務を連携されていくとなると専門業者と一緒にやらないとできないのも事実だという。