東京都品川区(大崎)の富士通エフサス 新本社オフィス

ICTインフラの構築や運用、保守サービスなどを行う富士通エフサスは、今年の5月、本社を神奈川県川崎市(武蔵小杉)から、東京都品川区(大崎)に移転した。あわせて、銀座、新宿にある主要拠点(計3カ所)も統合。もともと本社勤務だった600名を含め、約1,600名の社員が大崎に集約された。

同社では、社員を集約することで、組織間の連携による顧客ニーズへの迅速な対応を図ろうとしている。

  • 本社のワークスペースエリア

同社のオフィスリニューアルの取り組みは2011年からスタートしており、オープンな対話とコラボレーションができる職場を目指し、昨年度までに85拠点がリニューアルされている。

関越支社では、あえて社員が交差するレイアウトを採用したり、京都の街並みの特徴である「碁盤の目」をイメージした京都支社、姫路城をイメージし、大手門、二の丸、三の丸、東西の櫓、といった曲輪(くるわ)で本丸である執務室を囲み守る作りにした姫路支店など、地域の特色を出したユニークなオフィス作りも行っている。

  • 関越支社のレイアウト

  • 姫路支店

5月に移転した大崎の新本社オフィスは、新たな価値の創出や新しいコトに挑戦・実践する場と位置づけ、さまざまなワークスタイルに挑戦することで、さまざまなイノベーションを顧客に提供していく組織を目指しているという。

フリーアドレスを採用した新オフィス

新オフィスでは、新たにフリーアドレスを採用。事務机を人員の70%に抑える一方、ちょこっとミーティング、じっくりミーティング、集中ワーク用スペースなど、多様なフリースペースを確保した。フリーアドレス化にともない荷物の保管スペースは個別に割り当てられたロッカーのみとなり、自然とペーパレス化が促進。本社移転の際には35tもの紙資料を廃棄したという。

  • さまざまなミーティングスペース

  • ちょこっとミーティングスペース

  • 個人ロッカー

端末も超薄型のシンクライアント端末に変更し、持ち運びやすさを追求。代わりに大型ディスプレイと電源をオフィス内に数多く設置した。

  • 大画面でも作業できるように、島には大型ディスプレイを設置

  • フリースペースには数多くの電源が設置され、ソファにも電源がある

利用するオフィススペースは2フロアに集約され、営業やサービス企画部門、保守部門を1つのオフィスにすることで、顧客ニーズへのすばやい対応が可能になりつつあるという。

  • 多目的スペース。昼食時には、食事スペースにもなる。こちらもワークスペースとして利用することができる

また、予約しても使われない会議室という多くの企業が抱える課題を解決するため、「Smart会議システム」を採用。会議室に設置された液晶パネルからその場で割込予約や延長利用を行えるようにした。

  • 各会議室に設置された予約端末。会議室が空いていればここで割込予約ができる

富士通のサテライトオフィスも活用したテレワーク制度も導入

そのほか、本社移転を機に導入したのがテレワーク制度だ。それまでもテレワーク制度自体は存在したが、どちらかというと、育児や介護事情への対応を主目的にしたもの。今年の4月からはその対象を全社員に拡大し、勤務場所も自宅のほか、富士通のサテライトオフィスである「F3rd」や外部契約のサテライトオフィスにも広げた。

  • 富士通エフサスのテレワーク制度

テレワーク制度は利用開始から2カ月ほどが経過したが、現在は社員の1割程度が利用しているという。同社では厳密な利用回数の制限を定めていないが、1日フルでテレワーク勤務する場合は、週2回、月8回を目安にしているという。

同社では、2008年1月から仮想デスクトップシステムを導入しており、お客様先などの社外でも、会社PCを利用した仮想デスクトップ環境で業務を行うことで、情報漏えい防止を図っている。

また、休日や時間外にテレワーク勤務を利用する際には、同社が提供しているIDリンク・マネージャーを利用し、事前申請を行うことで労務管理を徹底している。IDリンク・マネージャーは、時間外勤務の事前申請と承認を行うためのツールで、申請がないと端末を定時に自動的にシャットダウンさせる機能も有する。富士通グループ内では、すでに7万人以上が利用している。同ツールは、当初は長時間残業の抑制が目的であったが、現在では労働時間の見える化、上司とのコミュニケーションツールという要素も加わってきている。

  • IDリンクマネージャーの活用

2つの改革

富士通エフサス 経営推進本部長代理 兼 人事統括部長の中川順司氏

同社が現在取り組んでいる働き方改革の源流は、2011年に遡る。その背景を経営推進本部長代理 兼 人事統括部長の中川順司氏は、「われわれは、保守ビジネスからスタートしており、これまで守りのビジネスをやってきましたが、今後、デジタルビジネスに移行する中では、イノベーティブなビジネスへと一歩踏み出すことが必要です。全社の風土改革は2011年から取り組みを開始していますが、昨年、社長の直轄組織として『組織風土改革推進室』を作り、改めて社長の旗振りのもと、全社を変えていこうとしています」と説明する。

改革は、組織風土と業務プロセスの2つの側面で行っており、組織風土では、何でも言いやすい風通しの良い組織、失敗を恐れず何にでも挑戦する風土づくりを目指し、各本部から若手中心に代表を集めて分科会をつくり、話し合いを進め、経営層に提案することを行ってきた。一方の業務プロセスの改革では、新たなビジネスに対応できるようにするため、ビジネスマネジメント本部が中心となり、各業務プロセスの見直しを行っているという。

同社では、時間の有効活用、場所を問わない働き方、働きやすい職場環境、健康経営により、顧客との共創を達成することをコンセプトにしている。そのためには、これらをまず社内で実践し、その経験をもとに顧客に価値を提供していくことが重要であると考えているという。今回の本社移転はそのための施策の1つだ。

  • 社内実践

  • 新オフィスでの新たなワークスタイル

同社では今後、これらの施策を通して、現在のプロダクト起点、オンプレミス主体、工数ビジネス主体の業務を、10年後を目処に、サービス起点、クラウド主体、高付加価値ビジネスを中心としたビジネスモデルに転換することを目指している。