理化学研究所(理研)は4月24日、「非環式レチノイド」が、がん遺伝子「MYCN」を発現する肝がん幹細胞を選択的に排除していることを突き止め、MYCNが肝がん再発に対する創薬標的であることを明らかにしたと発表した。

同成果は、理研生命医科学研究センター肝がん予防研究ユニットの小嶋聡一 ユニットリーダー、秦咸陽 研究員らの共同研究グループによるもの。詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」(オンライン版)に掲載された。

  • 肝がん組織の蛍光免疫染色像。細胞の核をDAPI(青)で、MYCNタンパク質をピンク色で、肝がん幹細胞をそのマーカーであるEpCAM(緑)の蛍光染色でそれぞれ観察した (出所:理化学研究所 Webサイト)

肝がんは、外科的切除などで治療した後も再発する確率が高く、極めて予後不良の疾患である。高い再発率の原因として、まだがん化していない肝臓組織に存在するがん幹細胞から新たながんが生じる可能性が考えられている。

今回、研究グループはまず、非環式レチノイドが作用する遺伝子を調べるため、正常肝細胞株と肝がん細胞株をそれぞれ非環式レチノイドで処理し、発現が変化した遺伝子をCAGE法を用いたトランスクリプトーム解析を行った。その結果、非環式レチノイドがMYCN陽性肝がん幹細胞を標的とし、肝がんの再発を抑制していることが明らかになった。

また、臨床研究の結果、非環式レチノイドを高濃度に投与したグループの約7割の被験者で、MYCN遺伝子の発現が抑制された。さらに臨床検体の解析により、MYCNの発現は肝がんの再発率と正に相関することも判明したという。

なお、今回の成果を受けて研究グループは、「今後、肝がん患者のMYCNの発現量を検査することで、肝がんの再発リスクの予測や、非環式レチノイドが効くと予想される患者をあらかじめ選び出すコンパニオン診断が可能になることが期待できる」などと説明している。