オープンストリームと電気通信大学(電通大)情報理工学研究科情報学専攻庄野逸研究室は、ユーザが回路構成を自由に設定できるLSIデバイス「FPGA」(Field-Programmable Gate Array)によるディープラーニングの実装について研究および実証実験を行い、その結果を、米国コーネル大学が運営する論文投稿サイトarXiv.orgに論文として発表した。
現在、IT業界ではディープラーニングをはじめとするAI技術の社会実装が課題となっている。AIシステムの構成を「クラウドvsエッジ」という構図で見た場合、これまでの研究開発はクラウド型の技術が先行している。
しかし、クラウド側だけにAI機能が偏ることは、今後の社会実装を進める上で、通信量・データ容量の増大や処理遅延(リアルタイム性の低下)、システムの信頼性・頑健性低下、電力消費の増大といった問題がある。
エッジコンピューティングとは、クラウドだけに頼ることなく、エッジ側で主要な演算処理を行うシステム構成で、近年の関連技術の進歩により従来の「組み込み」システムのイメージを超える、高度な演算性能を低コストで実現できる環境が整いつつある。特に最近ではAI用途の高度な計算も可能とする技術として、FPGAやエッジ用GPU、AI専用プロセッサなどが登場している。
そこでオープンストリームでは、IoT用途などで重要な小型化や低電力化に効果が高く、またオープンストリームのR&D戦略の柱であるリアルタイム性に寄与するFPGAに注目し、電気通信大学の庄野教授にも支援を受けつつ研究を推進してきた。
オープンストリームおよび電気通信大学庄野研究室の研究チームは、FPGAによるエッジAI機能の実現を目指し、FPGAを用いたディープラーニングのPoC実証実験(コンセプト検証)開発を行い、その結果をarXivに論文として発表した。
同論文には、演算規模を縮小化するため「バイナリ化ニューラルネット」手法を適用したGANモデル"B-DCGAN"を考案し、その性質を検証したこと。そしてB-DCGANをXilinxのZynq-7000型FPGA上に実装する手法を開発し、実際に必要な回路規模・メモリ容量などを検証した結果、低コストのエントリモデルFPGAでも実装可能であることが確認できたことなどが含まれる。
今後オープンストリームでは、今回培ったFPGA開発技術をさらに発展させ、画像や音声の認識・生成、スマートホーム、異常検知などのAI系アプリケーションや、ハードウェア暗号処理などのFinTech関連アプリケーションなど、エッジ・クラウド含めたFPGA技術の適用拡大を図っていくとしている。