高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市、KEK)は22日、機構内にある大型加速器「スーパーKEKB」が本格稼働した、と発表した。4月にも誕生直後の宇宙を模した環境をつくる実験を開始する予定で、宇宙の成り立ちの解明を目指す国内最大級の大型加速器の実験成果に期待が寄せられている。
スーパーKEKBは、地下10メートルにある1周3キロの日本最大の大型円形加速器。2010年まで運転を続けた前身のKEKBを大幅に性能向上させるために同年から高度化改造し、16年春にはほぼ完成。17年4月に素粒子が崩壊する様子を捉えることができる「ベルⅡ」測定器が設置された。素粒子の一種の「電子」と電子の反物質である「陽電子」が真空パイプの中で加速されて衝突する頻度を、従来の加速器「KEKB」の約40倍高め、衝突速度はほぼ光の速さまで加速できるようになった。
同研究機構によると、19日に加速器の1周3キロに及ぶパイプに電子ビームの入射を開始。21日には、光速近くまで加速したビームが安定して周回する状態となり、本格稼働したことを確かめたという。
宇宙が誕生した直後は宇宙空間の「物質」と、それらの物質と電気的な性質が逆の「反物質」が同じ数存在したと考えられている。しかしその後なぜ反物質は減り、物質だけが残ったかは、宇宙物理学の大きな謎となっている。KEKBは2008年のノーベル物理学賞を受賞した小林誠、益川敏英両氏の理論が正しいことを実証する実験に用いられた。
スーパーKEKBを使った研究には日本を含む世界20カ国以上の700人以上の研究者が参加する予定だ。
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