「剛腕アイドル」が、あなたの忘れたい思い出の品を砕いてくれる……そんなイベントが3月4日、秋葉原のAKIBAカルチャーズ劇場にて開催された。剛腕アイドルというのは、夢みるアドレセンス(夢アド)の京佳さん。といっても、彼女が筋肉ムキムキなわけではなく、ロボットアームが「剛腕」なのだ。

  • 「剛腕アイドル」こと、夢みるアドレセンス(夢アド)の京佳さん

    「剛腕アイドル」こと、夢みるアドレセンス(夢アド)の京佳さん

このロボットアームは、立命館大学発ベンチャー企業である人機一体が開発している「パワーエフェクタ」。人間の力を増幅することが可能となっており、アーム部分の倍率は70倍程度。ハンドの握力は500kgもあるという。指先を軽く動かすだけで、スチール製の空き缶でも簡単に潰すことができる。

  • 【剛腕アイドル握手会】スチール缶のデモ

パワーエフェクタは、人間が装着して、前後や上下に自由に動かすことが可能(左右にも動くようになっているが、安全のためフリー軸になっており、パワーの増幅は行っていない)。装着と言っても、グリップを持って、動かしたい方向に力を加えるだけなので、非常に直感的に扱うことができる。

またハンドについては、バイラテラル制御のマスタースレーブになっており、グリップ部のコントローラに指を通して操作する方式。双方向のバイラテラル制御のため、物体からの反力もフィードバックされており、掴んだときの感触が指先に伝わる。パワーだけでなく、壊したくないときはそっと握る繊細な操作も可能なわけだ。

  • パワーエフェクタの操作部

    パワーエフェクタの操作部。指の操作でハンドを動かしている

  • パワーエフェクタの手元の画面

    手元の画面には、可動範囲やトルクなどの情報が表示されている

パワーエフェクタのバージョン1.0が登場したのは2005年の愛知万博のとき。その後2006年にバージョン2.0に改良してから、しばらくバージョンアップは行っていなかったが、今回、制御系が一新されたバージョン2.1を開発、このイベントで初めて披露した。従来に比べ、反応が早くなり、より操作しやすくなっているという。

  • パワーエフェクタの最新バージョンとなる2.1

    最新のバージョン2.1。パワーは同等だが、操作性が非常に良くなった

  • パワーエフェクタ v2.1の制御部

    バージョン2.1の制御部。10年ぶりの更新で、計算性能が劇的に向上

筆者は初めて試したため、従来モデルとの比較はできないのだが、自分の意図した通りにアームが動いてくれ、遅れによる違和感などは特に感じなかった。複雑な動きも直感的にできることから、走行機能を追加して、フォークリフトのような用途などが考えられているそうだ。

パワーエフェクタは腕部分のみのロボットであるが、同社が目指すのは人型の重機。そのプロトタイプとして、現在開発を進めているのが「MMSEBattroid」と「パワーペダル」だ。人型重機の上半身と下半身に相当するもので、高さはそれぞれ2mクラス。実際に合体させるわけではないが、4mクラスの人型重機を実現できる証明になる。

MMSEBattroidは、2014年12月にテレビ放映された「ロボット日本一決定戦! リアルロボットバトル」に出場していたので、覚えている人もいるかもしれない。「ふなっしーロボ」をボコボコにしたマスタースレーブロボット、と言えば分かるだろうか。このとき、操縦していたのが同社の金岡博士だ。

  • MMSEBattroidの操縦風景

    MMSEBattroid。これは、2015年のニコニコ超会議のときの写真だ

  • 人機一体の金岡博士

    人機一体の金岡博士(右)。今回のイベントには裏方として参加

当時、MMSEBattroidのバージョンは0だったのだが、金岡博士によれば、現在バージョン1.0を開発中で、近々公開する予定だという。

一方、下半身となるパワーペダルは、2足歩行型のロボット。これもマスタースレーブ方式になっており、現在のバージョン4.0では、自動でバランスを取ることで、不整地歩行まで可能だという。こちらの最新バージョンも現在開発中で、今年半ばに発表する予定とのこと。

なお最後に、イベントの結果についても報告しておこう。浮気されたとか、婚約を破棄されたとか、日曜の昼前にしてはヘビーな内容で3件続けて指輪が持ち込まれたが、これをすべて粉砕。その後、厚みのある金属製のキーホルダーにはやや苦戦したものの、この破壊にも成功し、無事に任務を果たしていた。

  • 「剛腕アイドル」が、あなたの忘れたい思い出の品を砕いてくれるイベントの様子
  • 「剛腕アイドル」が、あなたの忘れたい思い出の品を砕いてくれるイベントの様子
  • イベントの様子