Googleは1月26日に記者向けの説明会を開催し、専用リソースを保有していない企業でもAIシステムの構築を迅速に行うことができるツール「Google AutoML」の第1弾として、1月17日からα版が提供開始された「Cloud AutoML Vision」について、製品説明会を実施した。

同社ではすでに、「Google Cloud AI」として、企業向けに「APIモデル」と「カスタムモデル」のAI製品を提供している。APIモデルは、学習済みの画像認識技術「Vision API」や音声認識技術「Speach API」などとAPI接続するだけで簡単に自社企業のアプリやサービスにAIを組み込むことができるサービス。一方、「Machine Learning Engine」として提供されるカスタムモデルは、機械学習のエキスパートがモデルを自ら作成する用途としてGoogleのインフラを活用するというタイプだ。現在1万を超える企業が「Google Cloud AI」を活用しているという。

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 マシンラーニング スペシャリストの大薮勇輝氏は「我々は、多くの企業や開発者がAIを便利でスピーディに活用できるような"AIの民主化"の実現を目指しています。現在、すでに誰でも使えるAPIモデルとエキスパート向けのカスタムモデルでAI製品を提供していますが、それだけでAIの民主化が達成できるかというとそうではありません。まだ我々にはできることが残されていると考えています」とAIに関する同社のビジョンとAI開発を取り巻く環境について述べた。

  • グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 マシンラーニング スペシャリストの大薮勇輝氏

    グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 マシンラーニング スペシャリストの大薮勇輝氏

Google AutoMLは「API」と「カスタム」の中間モデル

同社の統計によると、グローバルでは2100万人の開発者がおり、そのうちAIを扱えるデータサイエンティストは100万人にも満たない状態。ディープラーニングを習得している技術者はさらに少数なのだという。つまり、カスタムモデルである「Machine Learning Engine」を使いこなせる人材はそこまで多くないというわけだ。

  • 専門家が不足している業界の現状

    専門家が不足している業界の現状

また、より多くの開発者が使えるようにと、汎用的に設計されたAPIモデルでは、ビジネス固有の条件には対応できない部分がどうしても出てきてしまう。

「たとえば、車雑誌の編集者の場合、画像から車種を見分けたいという要望が出てきます。しかし、今のVision APIでは『車』というラベルが返ってくるため、特定のビジネスに特化した形では機械学習を使うことができませんでした」(大薮氏)

そこで登場したのが、APIモデルとカスタムモデルの中間モデルというべき「Google AutoML」だ。業界や企業特有の課題に対応するためのAIのカスタムモデルを、簡単に作れるようにするというコンセプトで開発された。データの前処理やモデルのデザインといった知識やノウハウが必要な部分を代替してくれて、シンプルなUIで機械学習モデルを作成することができるという。

画像をアップして性能評価をするだけ

「Google AutoML」の第1弾として提供開始された「Cloud AutoML Vision」は、効率的なモデルトレーニングとシンプルな転移学習によって、画像のデータをアップロードするだけで、数分で画像認識ができるカスタムモデルを作成することができる。また、転移学習よりも精度の高いLearning to Learnを活用することで、最短で1日以内に高精度なモデルの構築も可能だという。

  • 転移学習のイメージ

    転移学習のイメージ。ディープラーニングは多段の層から構成されており、それぞれで計算を行うが、転移学習は最終層だけ再学習させる

  • Learning to Learnのイメージ

    Learning to Learnのイメージ。各層のモデル構成とパラメータを再度チューニングする

ワークフローとしては、まず、ラベル付けされた画像をアップロード。そのあとは、「トレーニング」というボタンを押すだけで、予測が開始され、早ければ1日以内に性能評価結果が表示される。この性能評価の結果を見てビジネスに適用できるか判断し、適用できると判断すればアプリケーションに組み込む。その際も「Google AutoML」は、組み込みを自動で行ってくれ、アプリケーションへのリクエストが集中した際などもスケールを自動で行ってくれるため、基本的に利用者が行う作業は、学習させるための画像を収集するだけである。

  • 「Cloud AutoML Vision」のワークフロー

    「Cloud AutoML Vision」のワークフロー

「特にGoogleの研究成果やノウハウが蓄積されていることが、AutoML大きなメリットだと考えています。レントゲンなどの診断画像から医療を支援したり、販売商品の特徴から需要予測したり、事故画像をもとに自動車保険の見積もりを行ったりと、さまざまなシーンにおいて働き方を支援するツールになるのではないかと思っています」と大薮氏はGoogle AutoMLを活用した将来を予想する。

高度な専門知識が不要で、シンプルなUIで独自の機械学習カスタムモデルを作成できる「Google AutoML」。誰でも簡単にAIを活用できるようになれば、業界問わずさまざまなビジネス課題を解決できるようになるだろう。"AIの民主化"が実現する日は、そう遠くないのかもしれない。