科学技術振興機構(JST)は1月22日、JSTの進める戦略的創造研究推進事業において、京都大学(京大)が、量子計算の結果の正しさを効率的に事後チェックできる方法を開発したと発表した。
同成果は、京大 基礎物理学研究所の森前智行 講師、シンガポール国立大学およびシンガポール工科デザイン大学のJoseph Fitzsimons博士、Michal Hajdusek博士らによるもの。詳細は、米国科学誌「Physical Review Letters」(オンライン版)で公開された。
コンピュータの計算結果の正しさのチェックは、普段使っているコンピュータにおいても内部で自動的に行われている必要不可欠なプロセスだ。一方、量子コンピュータの場合にはノイズに弱いという弱点があるため、計算の正しさのチェックはいっそう重要となる。しかし、これまで提案されていた方法では、計算本体と計算チェックのプロセスが分離不可能な形になっていたため、計算時間が増大してしまうという問題があった。
研究グループは今回、量子計算の計算本体と計算の正しさのチェックを分離して、チェックを事後に行える効率的な方法を提案した。量子コンピュータは近い将来、現在の通常のコンピュータではシミュレートできないようなサイズの領域に達することが予想されているが、そのような場合でも、同研究で得られた新しい方法を適用することにより、通常のコンピュータでも効率的なチェックが可能となると期待されるという。
なお研究グループは、「将来、クラウドでの量子計算サービスがより一般化していくと、セキュリティの観点からも、クラウドの量子計算の正しさを利用者が簡単にチェックできるスキームが必要となってくる。この成果は、そのような未来において、安心安全な量子インターネットを実現する上で重要な基盤技術となるものだ」と説明している。