2017年11月下旬、国内の仮想通貨取引所で1BTC100万円を超えたビットコインは、その後わずか2週間弱で倍の1BTC200万円を記録。そして、高騰していく相場と共鳴するように、仮想通貨をビジネスへ取り入れる企業が現れ始める。今後、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、社会にどのようなインパクトを与えていくのか。SBIグループにおいて仮想通貨事業を展開するSBIバーチャル・カレンシーズ(SBIVC)代表取締役社長の齋藤亮氏に、仮想通貨を取り巻く環境の変化や2018年以降の見通し、同社の取り組みについて話を伺った。

  • SBIバーチャル・カレンシーズ(SBIVC)代表取締役社長の齋藤亮氏

齋藤亮(さいとう りょう)

SBIバーチャル・カレンシーズ 代表取締役社長

1984年生まれ。
2009年12月 カリフォルニア大学マーセド校 認知科学専攻 卒業
2010年4月 SBIホールディングス入社
2015年6月 SBI リクイディティ・マーケット 事業企画部 チーフ・マネジャー(所属長)
2016年4月 SBIホールディングス ブロックチェーン推進室 マネジャー
2016年11月 SBIバーチャル・カレンシーズ設立、同社代表取締役社長に就任。現在に至る

仮想通貨が脚光を浴びた2017年は、どのような年になりましたか?

齋藤氏:SBIVCは、SBIグループの中でも仮想通貨に特化した企業として2016年に設立しました。取り扱い対象が"未知"だったため、証券や銀行といったグループの主要ビジネスに影響が出ないように、別会社として事業を開始したという経緯です。設立して間もないこともあり、2017年は仮想通貨の理解から技術的な仕様、管理体制、サービス提供方法の検討などを進める年になりました。いわば、下ごしらえ期間ですね。

何もかもが手探りで、喩えるならば、海とも山ともわからない中をさまよっている感覚でした。それでも、どんな生き物が住んでいて、どこに川が流れていて、どんなものが食べられるのか、どんなリスクが存在するのか――、それらを理解できれば、王国を築くこともできるでしょう。そのために、1年かけてしっかりと調査を行い、「さぁ、国づくりを始めるぞ」という段階に到達したところですね。死なない程度の量を口にしてみて、食べてはいけないものなどがわかってきたイメージです。

実際には、まず少額の仮想通貨を自分自身で購入し、触ってみるところからスタートしました。500円くらいですかね。間違ったアドレスに送ってしまい、結局なくなってしまいましたが(笑)、そのようなリスクも触れてみなければわからなかったと思います。当時90GBもするビットコインコアを自分のマシンにダウンロードすることで、ウォレットサービスの存在意義や動作原理についても実際に確かめることができました。

事業環境という意味では、仮想通貨が一般に認知され始めた年になったと思います。仮想通貨をどのように使えばいいのか、多くの人が考え出したのではないでしょうか。ビジネスとして成立するには、いいタイミングで「制度の整備」と「市場環境の準備」が進まなければなりません。制度面では改正資金決済法が施行されたことで、仮想通貨を扱うためのルール作りや定義づけについて一歩目を踏み出すことができました。市場環境では投機的な目的が先行していますが、手に取ってみよう、触ってみようという人が増えたことは非常に大きな前進だといえるでしょう。見向きもされない段階から、やっと「仮想通貨で何ができるの?」といったレベルまで到達できたと思います。