OKIは11月8日、情報通信事業の基幹工場の1つである情報通信本庄工場(埼玉県本庄市)敷地内に「ITS(Intellegent Transport Systems:高度道路交通システム)テストコースを開設し、稼働を開始した。同日、報道陣向けにこのテストコースを用いたデモンストレーションを実施した。
2015年にETC2.0車載器が登場してから、高速道路利用時の料金支払いに加え、渋滞回避や安全運転支援のための情報提供サービスが開始された。今後は、駐車場料金支払いや、車両の運行管理などへの多目的利用の推進(民間展開)、自動運転への取り組みが加速すると予測されており、インフラ協調型ITSサービスのさまざまな社会実験が始まっている。
そうした状況を受け、ETCやVICSなどのITS関連のインフラ整備のノウハウをもつOKIは、ITSサービス「LocoMobi2.0」による民間展開を推進していくとしている。同サービスは、マネージドクラウドサービス「EXaaS」上にてサービス提供するSaaS型の商品で、収集した車両情報や道路情報の分析を行い、ネットワークを介して提供するもの。また、マシンラーニングによる渋滞予測エンジンをはじめ、同社がこれまで道路管理者向けの道路管理システムで培ってきた技術を基にした機能を搭載している。
ITSテストコースは、OKIグループとして、これらの活動を推進するための技術開発や商品評価などを行うことを目的としている。具体的には、ETCシステムや、料金所でスピードを落とすことなく走行するETC車載器を搭載した車両に課金ができる「フリーフローETCシステム」、LocoMobi2.0などの商品開発評価や、通信技術、交通環境のセンシング技術の開発を実施する。また、自動車・車載向けの試験・評価・解析サービスや先端運転支援システムにおいても活用し、次世代交通分野の発展に寄与していくとしている。
2020年、高速道路の逆走はゼロに?
テストコースでは、「逆走検知」「車両・歩行者検知」「LocoMobi2.0建設業向けサービス」の3つのデモンストレーションが行われた。
逆走検知のデモンストレーションは、ETCレーンに逆走すると、警告音がなるとともに「止まれ! 逆走です」とパネルに表示がされ、ドライバーに注意を促すというもの。平成27年の高速道路における逆走件数は259件で、事故率17.5%、事故46件、死亡8件、負傷18件であり、政府は「2020年までに高速道路での逆走事故ゼロを目指す」とする目標を公表しているなど、喫緊の課題となっている。
次の車両・歩行者検知のデモンストレーションでは、コースに設置されたアンテナが対象を検知し、それらの位置をモニター上に表示する様子が見られた。これは、ETC・DSRC車載器から送信された電波を、コースに設置された到来方向推定アンテナモジュールで受信し、アンテナモジュールを構成する各アンテナ素子の経路差から生じる受信信号の遅延量より電波到来の方位を推定することで実現している。
紫色の線が、車のいる位置。右上の図は位置関係を示しており、少し小さいが紫色の四角マークが車の位置を示す |
水色線、水色の四角マークが車の位置を示す。黄色線、黄色の四角マークは横断中の人の位置を表している |
LocoMobi2.0建設業向けサービスのデモンストレーションは、トラックが目的地に到着すると、トラックの管理者のモニターに、「到着を確認した」という表示がされるというもの。建設業向けサービスは、建設現場に資材を運搬する車両位置や道路状況をリアルタイムで分析し、車両の遅れや到着時間を基に、現場作業工程スケジュールへの影響を見える化することで、資材搬入を最適化することを目指すサービスだ。
従来の建設現場では、資材運搬車両の遅れを見込んで計画を立てており、運搬車両の駐車スペース、資材運搬のクレーンの稼動においては空き時間が発生することがあった。しかし、同サービスを用いることで、現場工程の組み替えを比較的柔軟に行うことが可能となり、現場工程の短縮を実現するとしている。同サービスは、大成建設の協力のもと研究・開発したという。
なおOKIは、物流車両管理サービスの提供開始を今年度内に予定しており、さらにさまざまな事業者との共創により、車両情報を活用した多方面の事業者向けにサービス提供を行っていくとしている。また、LocoMobi2.0をはじめとした次世代交通事業で、2017年度から2019年度の売り上げ250億円を目指すとしている。
テストコースのテープカットの様子 |