理化学研究所(理研)は、は、スーパーコンピュータ「京」を利用し、高効率な材料スクリーニングに基づいた探索により、「ペロブスカイト太陽電池」の新たな材料候補を発見したと発表した。

二重ペロブスカイト。中央のAサイトは水色・茶色、Xサイトは紫、各正八面体の中心のB/B'サイトは紫/灰色で表されている。(出所:理研プレスリリース)

A2BB'X6型の化合物において、周期表の青で網掛けした49元素をB/B'サイトとして採用したところ、全組合せ数は11,025個に上った。なお、緑のCsはAサイト、赤のCl、Br、Iのハロゲン原子はXサイトに入る。(出所:理研プレスリリース)

同研究は、理研計算科学研究機構量子系分子科学研究チームの中嶋隆人チームリーダーらの研究チームによるもので、同研究成果は、9月19日付けで米国の科学雑誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載されるのに先立ち、オンライン版に掲載された。

近年、次世代太陽電池の有望な材料として、ペロブスカイト結晶構造を持つ有機と無機のハイブリッド材料(ハイブリッド型ハライドペロブスカイト)が注目を集めている。その代表的なものに、メチルアンモニウム鉛ヨウ素やホルムアミジン鉛ヨウ素といった鉛化ハロゲン化合物があり、鉛化ペロブスカイトは低コストで容易に合成できるが、鉛による毒性の問題がある。そのため、非毒性元素を用いたペロブスカイト材料の開発が求められているという。

今回、研究チームは「二重ペロブスカイト」と呼ばれる「A2BB'X6型」の化合物を対象として、A、B-B'、Xのそれぞれのサイトに各3種類、49種類、3種類の元素を当てはめることで、合計11,025個という膨大な数の組み合わせの化合物を選び出した。そして「京」を用いることで、これらの化合物に対して第一原理計算を実施し、元素戦略的な材料スクリーニングに基づいたマテリアルズ・インフォマティクス手法により、ペロブスカイト太陽電池としてふさわしい適切な材料を効率よく探索した。

その結果、51個の低毒性元素だけからなる非鉛化材料の候補化合物を発見。また、51個の候補化合物をB–B'の組合せに着目して周期表の族の組合せで分けたところ、規則性があることが分かり、「第14族-第14族」、「第13族-第15族」、「第11族-第11族」、「第9族-第13族」、「第11族-第13族」、「第11族-第15族」の6タイプに分類することができた。

同研究で提案された非鉛化ペロブスカイト太陽電池材料を作製するには、従来用いられている溶液塗布法や蒸着法に代わる新しい製造技術が必要になる可能性もあり、いくつかの候補化合物に対しては、封入技術や化学的安定化技術によって酸化の問題も解決する必要がある。また、今回のスクリーニングで除外された二重ペロブスカイトの中にも、AサイトやXサイトを今回用いた原子や分子以外に置き換えることで高効率な太陽電池材料となる可能性を持った化合物もあるという。

今後は、同研究で構築した材料ライブラリを拡充することで、より高効率な非鉛化ペロブスカイト太陽電池材料のシミュレーション設計につながるものと期待できるということだ。