日本IBMとホートンワークスジャパンは9月5日、都内で記者会見を開き、両社のグローバル戦略提携の一環として、それぞれが提供するビッグデータ分野向けのソリューションの販売とサポートを開始すると発表した。
日本IBMは、ホートンワークスの次世代データ分析基盤「Hortonworks Data Platform(HDP)」と、ストリーミングデータのリアルタイム分析基盤である「Hortonworks DataFlow(HDF)」の再販およびサポートを開始。
一方、ホートンワークスジャパンはApache Hadoop向けIBM SQLエンジン「IBM Big SQL」と、データサイエンティストの生産性向上を目的に一連のツール・機能を提供する統合開発環境「IBM Data Science Experience(DSX)」の再販およびサポートを開始する。
ビッグデータとクラウドを最大限に活用しつつ、洞察を得てビジネスを変革するには、構造化データに加えて、Apache Hadoopなどの非構造化データを容易に使える仕組みが企業のデータ活用に求められている。さらに、大量に発生するデータの種類を問わず蓄積して、予測検知などに応用するには、データサイエンスや機械学習の仕組みが重要だという。
両社の協業では、このようなニーズに対応するため、それぞれが提供するデータサイエンス、機械学習、AI、ビッグデータ基盤に関連する製品を提供することで、データ・サイエンティストからビジネスリーダーに至るまで、増大するデータを活用して、意思決定できるシステム基盤の利用を推進していく方針だ。
日本IBM 執行役員 クラウド事業本部 クラウドソフトウェア&アナリティクス事業部長の三浦美穂氏は「企業が競争に打ち勝つには、あらゆるデータの活用とクラウドの活用が必要となる。基幹系データ、形式や量が多様なデータ、外部データをはじめ多様なデータの種類やワークロードに応じた適切なデータ管理基盤が必須となり、すべてを統合的に管理・活用することが重要だ。われわれは、データベース全体で共通のSQLアクセスを提供し、Sparkで機械学習を効率化することで、クラウドからオンプレまですべての環境でデータ管理基盤を提供を可能としている」と述べた。
また、同氏は「われわれはリレーショナルデータベース、DWH、Cloudantなどのデータベースのほか、オブジェクトストレージをはじめとした多様なデータベースを有しており、Hadoopに関してはホートンワークスと協業することでBig SQLを介してHadoopにアクセスし、DSXを活用して分析の効率とチームワークの効率の向上が可能となる」と、説く。なお、DSXのクラウド版の最小構成(5ユーザー/オブジェクトストレージ5GB)料金は月額63万7500円で、ローカル版は近日公開を予定している。
そして「データを貯めることに関しては、Hadoopのリーダーシップを握るホートンワークスジャパンの技術を全面的に採用し、互いに製品を構築していく。また、貯めたデータを活用することはアナリティクスでは重要なため、両社で共有する」と、三浦氏は意気込みを語った。
ホートンワークスジャパン 執行役員社長の廣川裕司氏はIBMとの協業について次のように説明した。
「1+1が3倍や4倍ではなく、10倍以上の結果を出す。理由としては3つある。1つ目はわれわれのユーザーとIBMのユーザーに対してデータ駆動型のソリューションを提供すること。2つ目は双方のパートナーにとってベストなソリューションを提供していくこと。そして、3つ目はApacheのオープンソース・コミュニティのコミッターが両社合わせて全体の1割を占めていることだ」(廣川裕司氏)。
同氏は、2020年に全世界のデータ量は44ZB(ゼタバイト)まで拡大することを見据え「音声や画像、動画などの非構造化データを、ハンドルしていく企業が勝ち組となる。そのためには、従来のERPなどに1つずつひもづいていたDWHではコスト、可用性の観点から対応しきれないため、オープンソースベースのデータプラットフォームが必須である」と、話す。
同社のHDPは、HadoopやSparkなどのオープンソース・ソフトウェアをベースにデータレイクや、 Enterprise Data Warehouseの最適化、ストリーミング対応、BI最適化などを行う。
また、HDFはデータフロー管理の「Apache NiFi」、メッセージングシステム「Apache Kafka」、リアルタイムデータ処理分散ソフトウェア「Apache Storm」などをベースとし、IoTとデータレイクの架け橋、あらゆるデータをエンド・トゥ・エンドで提供するとしている。
両社は2020年までに日本市場において狙うこととして「データサイエンス/機械学習市場におけるリーダー」「両社でDSXとHDPのエキスパート育成」「DSXとHDPを展開可能なパートナーの育成」「IBMイノベーションセンターへの展開」「ホートンワークスによるマイグレーションサービスの提供」の5つの項目を挙げる。
製品のパッケージングは、IBMでは標準Hadoop/Spark DistributionとしてHDPを採用し、ホートンワークスジャパンは戦略的データサイエンスプラットフォームとしてDSXを採用する。
提供イメージはDSX、Big SQL、HDPの3製品は両社から提供可能であり、IBMから提供した場合、HDPとHDFについても自社ソフトウェア同様、IBMのソフトウェアメンテナンスサポートで提供していくという。