東北大学は、「BORC」(ボルク)と呼ばれる複合体がシナプスの位置を規定する因子であることを発見したと発表した。
同成果は、同大学際科学フロンティア研究所の丹羽伸介助教らのグループとスタンフォード大学と共同で行われたもの。詳細は、米国の学術誌「Current Biology」に掲載された。
神経細胞同士はシナプスと呼ばれる構造によって情報をやりとりすることで回路を作る。脳内ではシナプスがほぼ決まった場所に形成されることは19世紀から知られており、シナプスが正しい位置にできないことは、てんかんのような脳の病気の原因となる。
今回、同研究グループは「C.elegans」(線虫)を使ってシナプスの位置を制御する因子を探索し、BORCという8つのタンパク質からなる複合体が欠損したC.elegansではシナプスが正しい位置に形成されなくなることを発見した。同グループはこれまでの研究で「KIF1A」と呼ばれる分子モータータンパク質がトラックの役割をして、シナプスの材料を神経細胞の決まった位置まで運ぶことを明らかにしていた。
このとき、KIF1Aのブレーキを解除する鍵となるタンパク質が「ARL-8」であり、これがKIF1Aに結合するとブレーキが解除され、シナプスの材料の輸送が開始される。しかし、ARL-8はそのままではKIF1Aに結合することができず、BORCがARL-8に作用してKIF1Aの鍵穴にはまる形に変える働きを持つことが分かった。
また、BORCを欠損したC.elegansの神経細胞ではトラックであるKIF1Aのブレーキが十分に解除されず、シナプスの材料が正しい位置まで輸送されない。その結果、BORCを欠損したC.elegansではシナプスが異常な場所に形成されてしまうことが分かった。
なお同研究グループは、同成果に対し、脳内でシナプスの位置がどのように決まっているのかはほとんど分かっていないことから、今回の発見はそのメカニズムの一端を明らかにするものとなると説明している。