IDC Japanは8月3日、国内企業の人材戦略と人事給与ソフトウェア市場動向の調査結果を発表した。同調査は同社が国内企業などの629人を対象に、生産性の向上や労働力の確保を目的に各社で進む働き方改革について、推進者/取り組みと課題/関連するIT利用の実態を調査した。
これによると、働き方改革の推進者は経営者が最も多く、次いで人事部長と経営企画が続き、多くの企業が長時間労働の抑制と社員の健康管理を目標に就業規則の見直しや、勤怠管理の強化に取り組む傾向にあるという。
働き方改革の推進者を見ると、経営者が42.4%と最も多く、人事部長が24.5%、経営企画が20.3%と続く。同社は働き方改革を3つの段階で捉えており、今回の調査では多くの企業が初期の「管理の強化」段階にあり、「就業規則や制度の見直し」「勤怠管理の強化」で長時間労働の抑止に取り組んでいることが分かったという。
また、5%以上の業績増加企業では、働き方改革予算をIT導入にも適用する予定があり、IT利用の重要性や効果に対する認識がそのほかと比較して高い傾向を示した。先進的な企業の取り組みは、第2段階である「効率性と生産性向上」の段階で、ITを利用したコミュニケーションの活性化に取り組んでいる。
働き方改革に関連して、人事管理とコラボレーションなど22種類のIT利用について調査した結果、ビジネスチャットと社内SNS、スマートフォン向けビジネスアプリ、タレントマネジメント導入に高い関心があったという。また、生産性向上のために自動化したい業務には「勤怠管理」と「経費と交通費精算」が挙がった。
IT導入においては「自社業務への適合性の高さ」と「操作性の良さ」を重視しており、課題には「効果の試算」「適用すべきIT技術/システムの選択」「適正コストの試算」が挙がり、働き方改革を支援する広範囲な業務の全体最適化には、コラボレーションと情報分析など広範囲な機能を、段階的に導入できるサービス・メニュー化が必要であると同社は推測している。
SAP/オラクル/富士通/マイクロソフト/ワークスアプリケーションズなどの主要ベンダーにおける働き方改革では、ITツールによる社員のコミュニケーションを活発化し、そこから得た情報の集約と分析力をベースに情報活用を行なっているという。
先進的で柔軟なワークスタイルと機械学習なども取り入れた多様なIT利用が、従業員個々の自発的な取り組み支援となり、事業に多様な効果を生み出し、その成果の多くは対応ノウハウとともに、それぞれ特徴のある顧客サービスの機能に反映している。
同社のソフトウェア&セキュリティ シニアマーケット・アナリストである、もたい洋子氏は「国内企業の働き方改革は、多くの企業が労務管理の強化段階にあるが、先進的な企業では社員間のシナジーを生むコミュニケーションの高度化で生産性を向上し、継続的な事業拡大を担う人材活用に向けて動き出している。国内企業は人事領域におけるICT利用で、これまで培ってきた組織対応の強さに加え、個々の従業員の個性や専門性を事業に生かすべきである。ICTを働き方改革に利用することで、取り組みの可視化、効果測定、新規プロジェクトへの最適な人材配置の実現を早期化する。今後の働き方改革の成熟度に合わせ、コグニティブ/AIシステムを軸にした国内のHR Techが活性化する」と述べている。