物質・材料研究機構(NIMS)は、同機構 エネルギー・環境材料研究拠点 ナノ材料科学環境拠点 リチウム空気電池特別推進チームの久保佳実チームリーダー、辛星(XIN Xing)ポスドク研究員、伊藤仁彦主幹研究員らの研究チームが、リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を大幅に改善する新しい電解液を開発したことを発表した。この成果は7月17日、「ACS Applied Materials & Interfaces」誌のオンライン版に掲載された。
「リチウム空気電池」は最高の理論エネルギー密度を有する"究極の二次電池"と言われている。現状、広く使われているリチウムイオン電池は、蓄電容量に相当するエネルギー密度がほぼ限界に達しており、リチウム空気電池によって蓄電容量の劇的な向上と大幅なコストダウンが期待できる。しかしながら、リチウム空気電池は放電電圧に比べて充電電圧が高いためエネルギー効率が低く、またリチウム金属負極の寿命が短いという課題があった。
今回、研究チームは、リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を大幅に改善する新しい電解液を開発した。同電解液により、充電時に正極にかかる過剰な電圧 (過電圧)が従来の1.6V以上から半分以下の約0.6Vとなり、エネルギー効率が60%程度から77%まで大きく改善した。さらに、寿命低下の一因とされていたリチウム金属の樹枝状の析出も防止することで、従来20回以下であった充放電サイクルの寿命が50回以上まで大幅に向上した。
研究チームは今後、この成果を活用して、電気自動車や家庭用蓄電地に向けた大容量、長寿命なリチウム空気電池の早期実用化を目指していくとしている。