京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、国内の一般市民と研究者を対象にした意識調査を行ったところ、ヒト-動物キメラ研究を許容すると回答した者でも、動物の脳や配偶子にヒトの細胞が混ざることに対しては大きな懸念を示すことがわかったと発表した。

同成果は、CiRA上廣倫理研究部門の澤井努 研究員、八田太一 研究員、藤田みさお 准教授によるもの。詳細は米国科学誌「STEM CELLS Translational Medicine」オンライン版に掲載された。

人-動物キメラの臓器などにヒト細胞が含まれることに対する抵抗感(各臓器に対して、「受け入れられる」、「まあ受け入れられる」、「あまり受け入れられない」、「受け入れられない」という4つの選択肢を提示。同図は、「あまり受け入れられない」、「受け入れられない」と回答した人の結果)

従来、ヒト-動物キメラ研究に関する倫理的問題として、ヒトの細胞が動物の脳に含まれる場合、ヒト-動物キメラがヒトと同等の認知機能を有するのではないかという点、また近年では、動物の生殖細胞の系列にヒトの細胞が含まれる場合、ヒトと動物のハイブリッドや動物からヒトが生まれてしまうのではないかという点が注目され、議論されている。

そこで、同調査では脳、肝臓、精子・卵子、皮膚、血液、心臓という6つの臓器、組織、細胞について、動物にヒトの細胞が含まれることに対する抵抗感について尋ねた。結果として、従来より倫理学の分野で議論されてきたように、一般市民も研究者も共に、他の臓器、組織、細胞に比べて、脳、精子・卵子にヒトの細胞が含まれることをより懸念することが明らかになった。

さらに、同調査では臓器別にどの程度であればヒトの細胞が含まれることを許容するかについても尋ねた。その結果、48.5%の一般市民、45.7%の研究者が脳にヒトの細胞が寄与することはまったく許容されないと回答し、52.1%の一般市民、74.3%の研究者が生殖細胞にヒトの細胞が寄与することはまったく許容されないと回答した。

CiRAは、同調査結果はヒト-動物キメラ研究における脳、配偶子のヒト化の問題に関しては、少なくとも当該問題を回避する方策を探究する必要性を示すとしている。