帝人は、京都大学発のEVメーカーであるGLMが製造・販売するスポーツEV「トミーカイラZZ(Tommykaira ZZ)」向けに、ポリカーボネート樹脂製のピラーレスフロントウィンドウを開発したことを発表した。

耐摩耗試験(1000回転)後のPC表面キズ比較:(左)ハードコートなし、(中)ウェット法、(右)プラズマCVD法(出所:帝人Webサイト)

自動車のフロントウィンドウには、衝突時の安全確保をや光の透過性、耐摩耗性などさまざまな要求特性があり、これまでは自動車保安基準によってポリカーボネート樹脂を使用することができなかった。また、ウィンドウを支え、前方衝突時に搭乗者を守る役割があるAピラー(支柱)には、太くすると前方の視界を妨げるという課題があった。

しかし、自動車保安基準の改正により今年7月から、国内で発売される新車種の窓にはガラスと同等の高い耐摩耗性が求められるようになるとともに、フロントウィンドウにポリカーボネート樹脂の使用が可能になる。

同社は今年3月、ウェット法でハードコートしたポリカーボネート樹脂にプラズマCVD法(ハードコート材料をガス化し、対象物の表面にコーティングする方法)でハードコートを追加することで、ガラス並みの耐摩耗性と耐候性を付与する技術を開発した。また、月島機械と共同開発した設備により、プラズマCVD法で実車サイズの大型樹脂窓や複雑な曲面を有する樹脂窓も均一にコーティングできるようになった。

そして今回、ポリカーボネート樹脂製のピラーレスフロントウィンドウが誕生し、京都発EVベンチャーであるGLMのスポーツEV「トミーカイラZZ」に搭載されることになった。

同ウインドウは、通常Aピラーがあるフロントウィンドウ周辺部に厚みをもたせることで、Aピラーレスを実現している。高い耐摩耗性と優れた耐候性を有し、7月から適用される新しい自動車保安基準を満たしている。フロントガラスとAピラーが一体となった透明な樹脂窓とすることで視界を遮るものがなく、安全なドライビングを提供する。

さらに、同ウィンドウの採用により、従来のガラス窓とAピラーの組み合わせに比べて36%の軽量化を実現し、自動車の走行性能の向上に寄与するということだ。

なお、同ウインドウを装着したトミーカイラZZは、6月28日からポートメッセなごや(名古屋市港区金城ふ頭)で開催される「人とくるまのテクノロジー展 2017」の、ピックアップセミナー横のブースにて初公開される予定となっている。

また、GLMは公道を走行するための国内認証を取得する予定であり、今秋を目途に同ウィンドウを、トミーカイラZZのオプションとして加える計画だとしている。