東北大学は6月13日、静磁波の分散関係を簡便に決定する「新しいスピン波の分光法」を開発したと発表した。
同成果は、東北大学材料科学高等研究所 橋本佑介特任助教、齊藤英治教授、九州大学大学院理学研究院 佐藤琢哉准教授らの研究グループによるもので、6月12日付の英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。
波の性質は一般に、波の波長と波の周波数のあいだの分散関係で決まる。スピン波の分散関係は、これまでにも実験的に観測されてきたが、従来の測定手法は原子炉からの中性子線や、極めて高度な光学技術が必要とされていた。特に、マイクロメートルスケールのスピン波である静磁波の分散関係を直接測定することは、これらの技術を用いても困難であった。
今回開発された手法「スピン・ウエーブ・トモグラフィ(SWaT)」は、磁気光学イメージングと呼ばれる磁化測定技術とフェムト秒レーザーを用いた超高速測定とを併せたもので、時間ドメインでの出力光観測に高度な信号処理技術を組み合わせて分光を実現。静磁波の分散関係を測定することが可能となった。
同手法を用いて、典型的な磁性材料である Lu2.3Bi0.7Fe4.2Ga0.8O12のスピン波を観測したところ、理論的に予想されていた静磁波領域の分散関係が確認されたため、実験室レベルで実現可能な静磁波の分光が実現されたものといえる。
静磁波の分散関係には、磁気異方性や飽和磁化など物質固有の材料特性や、形状磁気異方性など試料形状の特性が反映されることから、同研究グループは今回の成果について、同手法を用いた物質探索を通じて、スピントロニクス材料の開発に貢献するものと説明している。