冨士色素は、同社代表取締役社長・森良平博士が、電解質にイオン液体系電解液を用いたアルミニウム-空気電池を実現したのに加え、空気極に窒化チタンや炭化チタンを用いることで電気化学反応中に電池内部に蓄積していき反応を阻害する水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの副生成物を抑制できることを発見したことを発表した。この成果は、英国の学術誌「Sustainable Energy & Fuels」に掲載された。
電気自動車のさらなる長距離走行のためには蓄電池の高性能化と低コスト化が期待されているが、携帯電話やノートPCなどに用いられている現行のニッケル水素電池やリチウムイオン電池では電池容量に制約があり長距離走行が困難であり、より大きいエネルギー密度を有する次世代二次電池の開発が緊急課題となっている。
同社は次世代二次電池の候補のひとつである金属-空気電池の中でも、材料として扱いやすく、安価で、かつ資源量の観点からも安心なアルミニウムに注目して研究を進めてきたという。
「アルミニウム-空気電池」の理論的電池容量は、ほか次世代二次電池候補の中でも突出しているが、これまでは使い切りの一次電池であった。二次電池化への試みとしてイオン液体系の電解液を用いたものも研究されており、負極においては電気化学反応を阻害する酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムの抑制はされるものの、空気極ではこれらの副生成物が蓄積され、完全なる二次電池化ができない状況であった。
この研究では、電解液にイオン液体系、負極にアルミニウム、空気極に非酸化物セラミック材料である窒化チタン、炭化チタンなどを用いることで、空気極側においても副生成物の生成を抑制することに成功した。負極、空気極の両方においてこれら副生成物の生成を抑制することができたのは、同社によれば世界初とのことだ。その結果、電池内部全体で副生成物の生成を抑制することができ、完全なる二次電池化への目途がついたということだ。
今後は、新たに開発された新型アルミニウム-空気二次電池を既存のCR2032サイズにし、コインセルとして試作品の検討も行うなど、実用化・商品化を検討しているという。また、同社は化学会社として、ほかの企業、他研究機関との連携や協業も模索していく予定だとしている。