東京工業大学(東工大)は5月30日、特定の組成を持つ化学物質を認識し、紫外光を照射すると蛍光が消光されて分解する、光トリガー分子を発見したと発表した。

同成果は、東工大物質理工学院応用化学系 佐々木俊輔博士研究員、小西玄一准教授らの研究グループによるもので、5月9日付の米国科学誌「Macromolecules」に掲載された。

光トリガーは、ターゲット物質と出会うと蛍光が消光し、自身を分解するという2つの反応が起きる。この蛍光消光と分解は連動しており、シナジー効果が存在する。このような機能分子を高分子ゲルの架橋剤とすることで、特定の物質を加えて光照射すると、蛍光消光と分解による流動化で、形状が変わり、物質の検出を行うことができる系の設計が可能となる。

今回、同研究グループは、光トリガー分子として1,4-ビス(ジピペリジル)ナフタレンという青色発光色素を用いた。同光トリガー分子を架橋剤に用いた高分子ゲルにクロロホルム(CHCl3)を加えて紫外光を照射すると、クロロホルムとトリガー分子の錯体が生成され、蛍光が消光し、その錯体を経由してトリガー分子の分解反応が起き、ゲルの架橋部位が取り除かれる。そして、高分子ゲルが1本1本の高分子に戻り、系全体が液状化する。つまり、発光とゲルの崩壊という2つの方法によりクロロホルムを検出することができる。一方、塩化メチレン(CH2Cl2)では、発光するうえにゲルは崩壊しない。

これまでに知られているさまざまな蛍光色素のなかに、光トリガー分子の考え方を適用できる分子が多数想定されることから、同研究グループは今後、それらを用いて、簡便な分析が困難な物質の検出法を開発していきたい考えだ。

トリハロメタン(-CCl3;クロロホルムCHCl3)を選択的に蛍光消光する (出所:東工大Webサイト)