北海道大学(北大)は4月18日、がんの超初期段階で生じる代謝変化を解明したと発表した。

同成果は、北海道大学遺伝子病制御研究所 藤田恭之教授らの研究グループによるもので、4月17日付の英国科学誌「Nature Cell Biology」に掲載された。

がんは、細胞社会のひとつの細胞に変異が生じることから始まる。同研究グループはこれまでに、新たに生じた変異細胞の多くは周りの正常細胞との競合の結果、体外へ排除されることを明らかにしてきた。しかし、どのようにして変異細胞が排除されるのか、その分子メカニズムについては不明な点が多い。

同研究グループは今回、独自に確立した培養細胞系とマウスモデルを用いて、正常細胞に囲まれた変異細胞におけるさまざまな栄養物やエネルギーなどの代謝(合成・分解)経路について解析した。

この結果、正常細胞に囲まれた変異細胞においては、「ミトコンドリア機能の低下」と「解糖経路の亢進」という2つの代謝変化が生じていることが明らかになった。さらに、この代謝変化は、変異細胞の周囲に存在する正常細胞からの影響で生じたものであり、変異細胞の体外への排除に重要な役割を果たしていることがわかった。これらの代謝変化は、「ワールブルグ効果」という、がん発生の中期から後期にかけてがん細胞に生じるものと同様なものであるという。

同研究グループは、今回の成果をさらに発展させることによって、世界初の「がん予防薬」の開発へつながることが期待できると説明している。

今回の研究成果の概要 (出所:北大Webサイト)