東京大学は、同大学大気海洋研究所の吉田誠大学院生、佐藤克文教授と豊田市矢作川研究所との合同チームが、外来魚アメリカナマズは生息場所の流れ環境に応じて浮力と泳ぎ方を変えていることをはじめて明らかにしたと発表した。この成果は生物学誌「Journal of Experimental Biology」に掲載された。
日本国内の湖や河川では近年、ブラックバス、ブルーギルに次ぐ第3の肉食性外来魚チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)が侵入し分布を広げつつある。アメリカナマズは、水産上重要な生物を捕食したり、鋭いトゲで漁師にケガを負わせたりといった厄介な害をもたらすだけでなく、侵入先の生物や生態系にも大きな影響を与えることが懸念されているが、これまで適切な対策がとられておらず、そもそも野外での生態、特に河川での行動は分かっていなかった。
このたび研究チームは、アメリカナマズの遊泳行動からこれらの魚が保持する浮力を推定することで、省エネルギーな遊泳方法と多様な流れ環境への適応性を明らかにした。研究チームはアメリカナマズに小型の行動記録計を装着し、野外での遊泳行動を記録。上向きおよび下向きに泳ぐ魚の尾びれを振る強さから、魚が水中で上向きに受ける浮力の大きさを推定できたという。「湖にすむアメリカナマズ」は、水から受ける浮力が小さく、湖底付近に滞在し、体の重さを活用して尾びれを振らずに潜るグライディング遊泳を行なっていたという。一方で、「河川にすむアメリカナマズ」は、体重を支える十分な浮力をもち、尾びれを振りつつさまざまな深度帯を泳いでいたということだ。
これまで、湖の魚は浮力で体重を支える一方、川の魚は流れに耐えるため、浮力を小さくして川底付近でじっとしていると考えられてきたが、アメリカナマズはまったく逆の傾向を示した。これは、アメリカナマズは単に流れを避けるのではなく、流れの有無で異なるエサ環境に応じて、適切な浮力状態および遊泳方法を選択し、消費エネルギーを抑えていると考えられる。
この研究によって、外来種でもあるアメリカナマズの行動様式の一端が明らかになったことで、今後はその行動特性を考慮した、より効果的な駆除方法の開発につながることが期待されるとしている。