物質・材料研究機構(NIMS)は4月5日、リチウム空気電池の空気極材料にカーボンナノチューブ(CNT)を採用することにより、従来のリチウムイオン電池の15倍に相当する高い蓄電容量を実現したと発表した。

同成果は、NIMSエネルギー・環境材料研究拠点ナノ材料科学環境拠点リチウム空気電池特別推進チーム 久保佳実チームリーダー、野村晃敬研究員らの研究グループによるもので、4月5日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

現状のリチウムイオン電池は、小型で高電圧、長寿命という優れた特性にもかかわらず、蓄電容量に相当するエネルギー密度がほぼ限界に達しているという課題がある。この課題を解決するものとして研究が進んでいるリチウム空気電池は、あらゆる二次電池のなかで最高の理論エネルギー密度を有し、蓄電容量の劇的な向上と大幅なコストダウンが期待できる。しかし、従来の研究は少量の材料で電池反応を調べる基礎研究が中心であり、実際のセル形状において巨大容量を実証した例はなかった。

今回、同研究グループは、空気極材料にCNTを用い、空気極の微細構造などを最適化することにより、現実的なセル形状において単位面積当たりの蓄電容量として30 mAh/cm2という値を実現。この値は、従来のリチウムイオン電池(2mAh/cm2程度)の15倍に相当する。この結果について、同研究グループは、CNTの大きな表面積と柔軟な構造が寄与しているものと考察している。ただし、巨大容量が得られたという事実は、従来の考え方では説明が困難であり、リチウム空気電池の反応機構の議論にも一石を投ずる可能性があるという。

同研究グループは今後、この成果を活用し、実用的なレベルでの高容量リチウム空気電池システムの開発を目指し、セルを積層したスタックの高エネルギー密度化や、空気から不純物を取り除くといった研究にも取り組んでいくとしている。

CNT空気極の概念図(左)と巨大容量の放電および充電特性(右) (出所:NIMS Webサイト)