今までのアパレルの製造小売業から“情報製造小売業”へ――。ユニクロが進める抜本的なビジネスモデルの変革を、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏はこのように表現した。新生ユニクロは何を作り、どのように売るのか。
顧客の求めるものだけを作る
ファーストリテイリングが「有明プロジェクト」と銘打って進める全社的な改革。これを総括するグループ執行役員の田中大氏によると、ユニクロは「作ったものを売る」企業から、顧客が求めているものをリアルタイムで把握・商品化し、素早く手元に届ける企業へと変貌を遂げようとしている。その原動力となるのはデジタルイノベーションだ。
肝となるのは、ファーストリテイリングが構築を進めるAIを駆使した情報プラットフォームの存在だ。このプラットフォームに顧客の声を集約し、どんな商品が、どこで、どのくらい求められているのかを割り出す。この情報をもとに商品の企画、生産、販売を行うのが情報製造小売業としてのユニクロが目指すビジネスモデルだ。「服を着る人と作る人の境目をなくす」と田中氏は語る。
スピードを追求
顧客のニーズを素早く商品に落とし込むにはスピードが不可欠となる。ファーストリテイリングでは商品を作る際、企画、生産、販売という流れでリレー方式に仕事を進めていたが、これからは各社員が同じ情報を共有し、連動して動くような仕事の進め方を目指すという。
サプライチェーンのスピードアップに向けては、まずは商品の情報を全てデジタル化し、ライブラリーに集約することで、素早い企画立案を実現する。これまでの進め方では、例えば春物であれば春が来る前に企画を完了し、シーズンに合わせて新商品を投入していたのだが、企画立案のスピードが上がれば、今後はリアルタイムで顧客の求めるものを企画・商品化し、シーズン中に新商品を投入することが可能になる。
生産面の改革としては、新商品の投入サイクルを短くする。これまでは月ごとに新商品を作っていた工場でも、今後は週ごとの新商品に対応可能な体制とし、シーズン中に新商品を生産する比率を上げていく。物流面では空輸の活用や倉庫の自動化などでスピードを追求する。
販売面ではオンラインストアの商品を充実させ、スマートフォンサイトには直感的に商品を探せるような仕組みを導入した。商品はセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの店舗(計4万3,000店)で受け取れる体制が整っている。
これら全ての取り組みが噛み合えば、顧客は自分の望んだ商品を、いつでも、どこでも買うことができるようになり、店舗に出向かなくてもコンビニで受け取れるようになる。
それでは、製造小売業から情報製造小売業へと変革を遂げた後のユニクロはどんな商品を売るのか。柳井氏に質問する機会があったので聞いてみた。