新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月8日、2017年(平成29年)度のNEDO事業における注目テーマについての説明会を開催。数ある中から、3つのテーマに注力していくことを明らかにした。
NEDOの平成29年度の事業予算額は、前年比約99億円増となる1397億円が予定されており、その内1287億円がナショナルプロジェクト関連に充てられる計画となっている。ナショナルプロジェクトは、「新エネルギー分野」「省エネルギー分野」「蓄電池・エネルギーシステム分野」「クリーンコールテクノロジー(CCT)分野」「環境・省資源分野」「電子・情報通信分野」「材料・ナノテクノロジー分野」「バイオテクノロジー分野」「ロボット技術分野」「新製造技術分野」「国際展開支援」「境界・融合分野」の12分野に分けられており、新エネルギー分野が419億円と割り当てが最も大きいが、前年度比でもっとも予算の伸びが高いのが、地球温暖化対策技術普及等推進事業分を含む国際展開支援を除くとAIやIoTなどを含んだロボット技術分野の109億円(前年度65億円)となる。
こうした予算の割り当ても含め、NEDOでは、平成29年度の注目テーマとして、「人工知能」「ロボット・ドローン」「中小企業支援」の3つを掲げるとしており、中でも人工知能については、近年のAIブームの背景としてクラウドとディープラーニングの存在があり、あらゆる産業に対するインパクトになる可能性があることに言及。すでに産業技術総合研究所の人工知能研究センター(AIRC)を中心に研究を進めており、日本の人工知能技術の向上を図る取り組みを開始しているとするほか、その応用となる「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の自動走行システムの大規模実証実験についても新たに平成29年度から管理法人となったこともあり、世界のトップに立つことを目指した取り組みを進めていくとする。
また、ドローンに関しては、バッテリーの長寿命化や高度な人工知能の搭載など、まだまだ課題が多く残されており、グローバルでの規制への対応も含めて研究開発を進めていくことが求められていることから、平成29年度は、安全基準や性能評価などを含めて、日本発のルールで開発競争が加速する仕掛けの構築も目指す「World Robot Summit」を開催し、その中で競技大会「World Robot Challenge(WRC)」のプレ大会を2018年に、本大会を2020年に予定するなど、世界を巻き込む動きを加速させていくとした。
さらに、中小企業支援については、これまでも継続して行ってきてはいるものの、まだまだ米国に勝てておらず、その投資額も米国は日本の70倍と圧倒的に多いのが現状であることを踏まえ、NEDOの古川一夫 理事長は「このままの状態に甘んじるつもりはない」としており、企業間連携やスタートアップに対する事業化支援プログラム「SCA」を開始するなど、ベンチャー企業の育成についても複数のステップで実施することで、柔軟な支援を行っていき、IPOだけでなく、大企業によるM&Aなども着地点となる土壌の育成を進めていくとした。
なお、上述の古川氏は、「平成29年度は、この3つを進めていく。政府そのものがGDPを引き上げるための施策を多数進めているが、NEDOとしても、取り組みが少しでもGDPを引き上げることにつなげることになればと思っている」と、これらの取り組みに対する抱負を語っており、例えばM&Aに向けて、ベンチャー企業が不利にならないようなルール策定などを積極的に進めていくとコメントしている。