ON SemiconductorはFairchild Semiconductorの買収を2016年9月19日に完了し、新たな体制を確立。これを受けて同社は11月30日、都内で会見を開き、同社の今後の方向性、ならびに日本における製造拠点の状況などの説明を行った。
同社コーポレートストラテジ&マーケティング担当上級副社長のディビット・ソモ氏は、「今回の買収により、パワーソリューション分野で強みを発揮する半導体企業が誕生した」と語るほか、ハイパフォーマンスアナログやセンサ、ミクスドシグナルなどの分野でもポートフォリオの拡充を果たしたと説明しており、その結果、自動車や産業機器、通信分野を中心に市場の拡大を狙えるようになったとする。買収の結果、同社の従業員数は全世界で約3万人、売上高も約50億ドル規模となる。
Fairchild買収の最大の目的は同氏の言葉にもあるように、従来から提供してきたIoTやモバイル機器向け低電圧ソリューションに、Fairchildの中電圧・高電圧ソリューションを組み合わせることで、自動車や産業機器分野に対する存在感を強めることができるようになるためだ。
新生ON Semiconductorの注力3分野。昨年のソモ氏の説明では、「車載」「ワイヤレス」「産業機器」であったが、微妙に変更したことについて聞いてみたところ、ワイヤレスの中に産業機器のIIoT部分を統合したものがIoTで、それを除いた産業機器で主軸となるのがパワーコンバージョン/モータ制御の分野になるとのことであった |
半導体市場の成長率は鈍化しているが、自動車、IoT、パワーコンバージョン/モータ制御の3つの分野ではまだまだ高い成長率が期待されており、こうした分野で存在感を増すための独自ポジションを築く必要があり、そのためにFairchildが必要であったという。
また、単に製品ポートフォリオを拡充するだけではなく、最終製品そのものの複雑化が進む一方で、その開発速度の短縮が求められる状況に対応するための技術支援を進めることを目指したソリューションエンジニアリングセンター(SEC)を世界9拠点に設置して、カスタマの製品開発を支援している。日本にもSECが設置されており、国内カスタマのIoT機器やウェアラブル機器などの開発支援を行っているという。
その日本国内の状況だが、従来に引き続き、新潟工場の生産能力拡充を続けている。というのも同社は、Fairchildの買収完了を受けて、従来、システム・ソリューションズ・グループ(SSG)やイメージセンサ・グループ(ISG)といった4つあった事業グループを、より補完性のある技術などをグループ化しなおし、新たにパワー・ソリューション・グループ(PSG)、アナログ・ソリューション・グループ(ASG)、イメージセンサ・グループ(ISG)の3つの製品グループに再編。これにより、3つの製品グループすべてをサポートする必要が生じ、生産能力の拡充が必要になったとする。2016年11月時点での生産能力は週あたり1万2000枚(前年同期で1万枚/週)だが、WLPもサポートしており、こちらは週あたり1500枚のウェハを処理できる能力となっている。また、200mm(8インチ)ウェハの厚みを50μmまで削ることができるUltra-Thin技術の提供も開始しており、さらなる製品の高性能化などにつなげている。
Fairchild買収を機にターゲット市場に向けたソリューションの提供を行うビジネスグループを組織。日本(右)も同様で、例えばオートフォーカスや手振れ補正技術などはイメージセンサの技術となるため、ISGに組み入れられることとなった |
ちなみに日本には新潟工場のほかに、富士通とのジョイントベンチャーである会津富士通ウェハファブがあり、こちらも生産能力の拡充が進められており、現状で週あたり2200枚の処理能力を有しているが2017年末までにこれを4000枚/週まで引き上げる計画としている。また、LVアナログCMOSプロセスとダイオードMV FETのプロセス移管が進められているほか、新プロセスとして次世代バッテリ保護用FETおよび中電圧パワーFETプロセスの開発が進められているという。
なお、今回の買収により、Fairchildのファブも活用可能となる点についてソモ氏は、「生産能力が増加するという意味ではよいこと。世界における生産能力の最適配置については今後の検討材料」としつつ、内製比率を増やしていきたい意向を示し、製造という面でも日本は重要な地域になってくることを強調。今後も引き続き、日本における投資を継続していくことで、日本から世界に向けて積極的にビジネスを展開していける企業への成長を図っていくとした。