産業技術総合研究所(産総研)は11月1日、魚油の摂取による脂質代謝改善効果が摂取時刻によって異なることを、マウスを使った実験により明らかにしたと発表した。
同成果は、産総研バイオメディカル研究部門 生物時計研究グループ 大石勝隆研究グループ長、マルハニチロらの研究グループによるもので、11月12日~13日に名古屋大学で開催される「第23回日本時間生物学会」にて発表される。
これまでに、魚油に含まれるDHAやEPAの心血管障害の抑制効果や抗アレルギー効果、脳機能向上効果、脂質代謝改善効果などの多様な機能性が報告されており、サプリメントや医薬品の有効成分として使用されている。一方、魚油の摂取時刻と機能性との関連性についてはこれまで明らかになっていなかった。
同研究グループは今回、マウスを明期12時間・暗期12時間の明暗環境下にて飼育し、脂質代謝の改善効果が期待される魚油について、摂取時刻による機能性の違いを評価した。
具体的には、マウスを、魚油を含まない果糖過剰食を与えたコントロール群と、夜行性のマウスにとって朝食となる活動開始時間帯を中心に12時間だけ4%の魚油を含む果糖過剰食を与え、残りの12時間は魚油を含まない果糖過剰食を与えた朝摂取群、夕食となる活動終了時間帯を中心に12時間だけ4%の魚油を含む果糖過剰食を与え、残りの12時間は魚油を含まない果糖過剰食を与えた夕摂取群の3群に分け、いずれの群のマウスも自由摂食として2週間の飼育を行った。その後、血液と肝臓を採取し、脂質の蓄積を調べた。
この結果、1日あたりの魚油の摂取量は朝摂取群と夕摂取群との間に有意な差は認められなかったが、血液中と肝臓中の中性脂肪の量は、コントロール群に比べて朝摂取群だけに有意な低減効果があった。また、魚油の摂取による中性脂肪低減効果は、魚油に含まれるDHAやEPAによると考えられているため、これらの脂肪酸の血液中の濃度を測定したところ、夕摂取群でもこれらの脂肪酸の増加が確認されたが、朝摂取群の血中濃度は夕摂取群よりも有意に増加していた。これは、朝の魚油の摂取はDHAやEPAの血中濃度を高め、脂質代謝を改善することを示しているといえる。
同研究グループは今後、魚油に含まれるDHAやEPAなどの機能性成分の吸収や中性脂肪の低減効果が時刻依存性を示す分子メカニズムを明らかにするとともに、ヒトについても魚油の至適摂取時刻に関する実証を進める予定だという。