東北大学は9月27日、血行状態モニタリング装置「魔法の鏡」の開発に成功したと発表した。
同成果は、東北大学サイバーサイエンスセンター先端情報技術研究部 吉澤誠教授らの研究グループによるもので、同装置は10月1日に仙台国際センターで開催される「第39回日本高血圧学会 市民公開講座」会場入り口で展示される予定。
同研究グループは、ビデオカメラとコンピュータを内蔵した鏡型ディスプレイの前に立つだけで、自律神経指標に基づいたその日の健康予報を使用者に直感的でわかりやすく表示するツールとして、"魔法の鏡"を実現することを目指している。
これまでに、脈波信号の計測によく利用される光電脈波計の代わりに、ビデオカメラで撮影した身体映像から、皮下の血液中のヘモグロビンが吸収する緑色信号に基づいて、脈波伝搬時間の推定を行う技術を開発し、これが血圧変動と正の相関をすることを明らかにしてきた。今回の研究では、この技術に基づいて鏡型ディスプレイを構築した。
具体的には、まず身体映像の領域をモザイク状の小領域に分割し、各領域の緑色信号のうち心拍周波数近傍の成分が強いものだけを対象として選択し、心拍変動に無相関な運動や周辺光変化による雑音成分をリアルタイムにキャンセルするアルゴリズムを開発。
さらに映像脈波情報から脈波伝搬時間あるいは血行状態を推定するために、身体の異なる2カ所の領域間の信号の位相差を抽出し、各モザイク領域を変遷する2次元的な血行パターンを顔などの実映像に重畳して表示させた。これにより利用者は、血行状態の変化と自分自身の体調の変化とを比較することができるようになる。
たとえば、同装置を洗面所や鏡台などに取り付けることで、毎朝身支度を整えたり化粧をしたりする際に、自分の顔に重畳する血行状態を観察することができる。また、風呂場などの脱衣所に設置し、ビデオカメラを利用者の後方に取り付けることにより、普段は見えない利用者の肩や背中の血行状態が観察できるようになると考えられる。
今後は、心拍数変動や脈波振幅変動などから得られる自律神経系指標も表示する予定だという。