次の図はM1コアのチップ写真である。命令の供給を行うフロントエンドが40%程度の面積を占めている。
次の図はスマホ用のSoCから、4コアプロセサの部分だけを切り出したものと思われる。4つの角のそれぞれにCPUコアがあり、十字の形にL2キャッシュの4つのバンクが配置されている。そして、十字の中心には、4コアのアクセスのアービタやマルチプレクサが配置されている。
性能であるが、次の図の青の棒グラフが2.6GHzクロックのM1のシングルコア性能、灰色の棒グラフは2.1GHzのA57のシングルスレッド性能である。これらは、Galaxy S6の性能とGalaxy S7の性能の比較になっている。
全体的には、M1のシングルスレッド性能は、A57と比べて20~40%程度向上している感じである。
マルチコアの性能比較は、2.3GHzクロックのM1と2.1GHzのA57を比較している。M1のクロックが下がっているのは、消費電力が大きいので、2.6GHzで動かせるのは2コア以下、4コアでは2.3GHzという仕様になっているからである。クロックを落としたのでM1の優位は小さくなり、逆転しているケースも見られるが、全体的には優位を維持している。
次の図はM1とA57の消費電力を比較したもので、2.3GHzクロックのM1と2.1GHzのA57の消費電力を比較している。この図によると、消費電力はほぼ同じで、多少、M1の方が多いという感じである。
結論として、M1は、Samsungがゼロから開発したCPUで、3年というアグレッシブなスケジュールで開発し、問題も発生せず、予定通り量産を開始することができた。そして、前世代と比較して性能、効率が改善し、業界としてベストなCPUの1つであると述べた。
Exynos M1は、マイクロアーキテクチャをみると、性能を向上する機構を満載しており、意欲的な設計と思われるが、IPC的にはCortex-A57と大差ない性能と思われる。電力的にも2.3GHzのM1と2.1GHzのA57は同等で、性能、電力ともに、M1にそれほど大きな優位があるとは思われない。これでは、少なくともCPU性能の向上という理由でGalaxy S7を買うというインセンティブにならないのではないかと思う。
まあ、初めての自社開発で、ARMのA57コアを僅かでも超えるコアを作れたことは意義があるという見方もできる。