東京大学(東大)は9月1日、満月の前から満月にかけての3日間にウシの出産数が増加することを明らかにしたと発表した。

同成果は、東京大学大学院農学生命科学研究科 米澤智洋准教授らの研究グループによるもので、8月31日付の米国科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

産科医やウシの農家は「満月のころに出産数が増える」という実感をもっているが、これが科学的かつ明確に示された報告はない。むしろ、人においては否定的な結果が多数報告されているが、人は栄養状態や社会環境などによる個体差が大きいため、こうした研究で有効な結論を得ることは難しい。

そこで同研究グループは今回、人より均一なデータの得られやすいウシをモデル動物として採用。北海道石狩地区の夜間照明のないフリーバーンで一様に飼育管理された合計428頭のホルスタインを対象に、出産日と月齢周期の関係を調べた。

この結果、新月から満月にかけて出産数は増加し、特に満月の前から満月にかけての3日間は有意に増加していた。満月以降は下弦の月3日後まで出産数の低下が認められた。なお、この変化は初産牛に比べて経産牛で顕著にみられたという。また人工授精日から算出された分娩予定日が新月から三日月にあたる出産の妊娠期間は有意に延長し、満月から下弦の月にあたる出産の妊娠期間は有意に短縮していた。

今回の研究では原因まで明らかにされていないが、同研究グループは月光によるメラトニンの分泌低下が満月の出産数増加に関与していると仮説を立て、さらなる研究を計画しているという。

分娩後すぐのウシの親子(東京大学農学部附属牧場、李俊佑助教 撮影)

月齢周期と出産数の関係を示したヒストグラム(論文より引用)