AI事業の強化を図る「PFDeNA」

DeNAはこれまでインターネット上で、ゲームやSNS、eコマース、ヘルスケア事業などを手がけてきており、莫大な量のユーザー行動や取引データを抱えている。前述したディープラーニングでは、学習のために非常に大きな量のデータを読み込ませて処理する必要があるのだが、まさにそのための「餌」には事欠かない状況だ。

しかし一方で、ディープラーニング技術そのものへのノウハウがあるわけではない。ロボットタクシーで提携したZMPや九州大学、仏などの技術は自動車の運転に特化したかたちなので、汎用性のあるディープラーニング技術やデータ解析を持ったパートナーが必要だった。

そこでDeNAが目をつけたのが、国内でのディープラーニング開発で高い評価を受けるPreferred Networks(PFN)だ。PFNは元々、自然言語処理などの技術を持ったPreferred Infrastractureから2014年にスピンオフして設立されたベンチャー企業で、IoTなどから得られる莫大なデータを人工知能の機械学習を経て処理し、解析することに特化している。「グーグルの先を行く技術を狙う」「業界トップとしか組まない」と明言し、トヨタが10億円を出資するほど高く評価されている、その実力は世界でも屈指のものだ。

両社は7月14日に合弁企業「PFDeNA」を設立することを発表した。この新会社では、DeNAが蓄積してきたさまざまなデータをPFNのディープラーニング技術により解析し、企業向けソリューションや消費者向け商品・サービス等の提供を行なっていくという。

新会社の設立により、DeNAは自社の事業領域でAIを活用できるようになる。たとえばゲームであれば、手強い敵のアルゴリズムを開発したり、逆に味方のキャラクターをAIで操作することも可能になる。ヘルスケア事業であれば運動データを解析して健康へのアドバイスを行ったり、未発見の潜在的な病気の発見といったこともできるだろう。すでにグーグルやマイクロソフトがbotによる対話システムを実用化しているが、DeNAでもオンラインサポートをAIによる対話式のサービスに置き換えることを視野に入れているようだ。

DeNAがデモンストレーションした自然言語解析によるチャットbot。人間との会話が自然に行えており、これをサポートなどに活用する意向だ