北海道大学(北大)は6月20日、環境DNA解析により水を汲むだけでニホンザリガニの生息の有無を把握することに成功したと発表した。

同成果は、北海道大学大学院地球環境科学研究院 根岸淳二郎准教授、パシフィックコンサルタンツ 都市・環境事業部環境室 環境室長 池田幸資氏(北海道大学大学院博士後期課程在籍)、兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科 土居秀幸准教授らの研究グループによるもので、6月19日付けの米国科学誌「Conservation Genetics Resources」電子版に掲載された。

絶滅危惧種であるニホンザリガニは、河川上流部の石の下に隠れて生息しているため調査が困難であり、生息確認に多大な時間やコストがかかるのが課題となっている。今回、同研究グループは、河川などの水環境中に含まれる水生生物のフンや表皮などから溶け出たDNA断片(環境DNA)に着目。水中に溶存するニホンザリガニ特異的なDNAの有無でその生息地を把握すべく、ニホンザリガニの種特異的プライマーを用いてDNA断片を増幅・定量できるリアルタイムPCR法を利用した野外調査を行った。

同研究グループは、2014年と2015年に、21カ所の札幌近郊の河川上流域で沢水をそれぞれ1リットル採水し、ろ過して残ったフンや表皮、体の粘膜などに含まれるニホンザリガニのDNAの有無をリアルタイムPCR法で解析。この結果、ニホンザリガニが捕獲された10カ所すべてで、1リットルの水からニホンザリガニ特異的なDNAが検出され、環境DNAからその生息が確認できたという。

今回の結果について、同研究グループは、環境DNAを用いた調査が従来の調査手法より、簡易にかつ確実に水生生物の有無を明らかにできることを示唆しており、水中に生息する絶滅危惧種や外来種のモニタリングへの応用が期待できると説明している。