国立科学博物館(科博)は6月9日、フローレス島の超小型原人が矮小化したのは少なくとも70万年前であることを発見したと発表した。
同成果は、同博物館 人類研究部 人類史研究グループ 海部陽介グループ長らの研究グループによるもので、6月8日付けの英国科学誌「Nature」に掲載された。
フローレス原人(学名:ホモ・フロレシエンシス)は、身長が約105cmという超小型の原人で、その化石は、インドネシアのフローレス島にあるリャン・ブア洞窟の、約10~6万年前の地層から発見されている。一方、リャン・ブア洞窟から75kmほど離れたソア盆地では100~70万年前の石器が見つかっており、その頃にはすでに島に人類がいたことがこれまでにわかっていたが、人骨の化石は未発見のままとなっていた。
同研究グループは、2014年に発掘調査を行い、ソア盆地で人類の下顎骨1点と歯6点の化石を発見。年代測定の結果、80~65万年前のものであることが明らかになった。
これらの歯と下顎は、どれも大きさがリャン・ブアのフローレス原人と同程度か、あるいはやや小さく、特に下顎大臼歯は、リャン・ブア洞窟のフローレス原人のような特殊化が起こる前の原始的な状態で、全体的に初期のジャワ原人のものと似ていたという。また、下顎骨は、猿人やハビリス原人ほど原始的ではなく、ジャワ原人、そしてリャン・ブアのフローレス原人に近いものであったことから、ソア盆地の原人は、リャン・ブアのフローレス原人の直接の祖先であった可能性が高いと考えられる。
今回の研究により、フローレス島における原人の極端な小型化の起源は古く、70万年前までには起こっていたことが明らかになった。また、島における原人の矮小化は長い時間をかけて少しずつ起こったのでなく、原人が渡来してから30万年以内にほぼ完了していたことがわかった。
同研究グループは、今回の成果について、リャン・ブアのフローレス原人が成長障害を煩った現代人に過ぎないという一部研究者の仮説を、明確に否定するものであると説明している。