北海道大学(北大)は6月7日、睡眠時無呼吸症候群患者の夜間眼圧変動の測定に成功し、緑内障発症との関係を解明したと発表した。
同成果は、北海道大学大学院 医学研究科 新明康弘助教、石田晋教授らの研究グループによるもので、米国科学誌「Investigative Ophthalmology & Visual Science」5月号に掲載された。
眼圧は、時間帯や姿勢によって変動することがこれまでにわかっている。しかし、睡眠中の眼圧を持続的に測定することは技術的に困難であるため、睡眠時無呼吸症候群患者は緑内障の有病率が正常な人の約10倍高いことが知られていたが、その理由は謎のままとなっていた。
今回の研究では、スイスのセンシメッドが開発した新しいコンタクトレンズ型眼圧計が用いられた。同眼圧計には、眼圧の変化を感知するセンサーがついており、同研究グループは、5分ごとに30秒間の記録を実施。同時に睡眠の状態をモニタリングするために、睡眠中の脳波、呼吸、筋電図、心電図、いびき、酸素飽和度も測定し、記録した。
これらの測定結果をもとに、睡眠中の呼吸が停止しているときと呼吸が停止していないときに分けて眼圧を比較したところ、通常、息を止めた時には胸腔内圧が上がるため眼圧は上昇するが、無呼吸発作の場合にはむしろ気道閉塞により息が吸い込めなくなるため、胸腔内圧が下がって外気に対して陰圧となり、非発作時よりも眼圧が下がっていることが明らかになった。
緑内障は眼圧が上昇することで視神経が障害され、ものの見える範囲が狭くなっていく病気といわれているが、無呼吸発作は、眼圧を下げると同時に血中酸素飽和度も下げることがわかったため、睡眠時無呼吸症候群患者では、低酸素状態などの眼圧上昇以外のメカニズムによって視神経障害が引き起こされていると考えられる。
同研究グループは今回の成果について、たとえ眼圧が上昇しなくても、低酸素状態などがあれば、視神経が障害を受ける可能性を示しており、日本人に多くみられる正常眼圧緑内障の病態解明の一助になることが期待されるとしている。