4月29日、幕張メッセで開催されたニコニコ超会議のドワンゴ超自由研究ステージにて、CGとVRに関する座談会が開催された。

ニコニコ超会議のドワンゴ超自由研究ステージ

登壇者は映画監督の樋口真嗣氏、ゲームクリエイターでNVIDIA Japan シニアディレクターの橋本和幸氏、ドワンゴ UEIリサーチ所長であり日本におけるCG理論のパイオニアでもある東大名誉教授・西田友是氏の3名。異なる業界でCGとVRを追いかけてきた3人が、VR元年と呼ばれる2016年以降の動向を語り合った。なお、司会はUEI代表取締役社長・清水亮氏が務めた。

CGはどのように発展してきたのか

そもそもコンピュータ・グラフィックス――CGとはいかなる分野なのかを簡単に振り返っておこう。CGの歴史をひもといたとき、最初に挙げられるのは情報理論の父と呼ばれるクロード・シャノンである。情報を圧縮できることを発見したシャノンについて、清水氏は「皆さんがZipを使えるのはこの人のおかげ」という表現で説明する。

そんなクロード・シャノンの弟子であるアイヴァン・サザーランドは、コンピュータ史において非常に重要な二つの技術を発明した。インタラクティブコンピュータとヘッドマウントディスプレイである。これらはそれぞれ、現代のCGとVRへとつながっていく。

東大名誉教授・西田友是氏

一方、日本におけるCGの父といえば登壇者でもある西田氏である。CGとの出会いについて西田氏は「1970年、大学3年生のとき広島大学の中前教授の研究室に入ったのがきっかけ」と語り、「(CGの研究を始めたのは)アジアでは最初だと思う」と当時を振り返った。

ファイナルファンタジー7のプログラマとしても知られる橋本氏がCGに出会ったのは、大学卒業後に日本シンボリックスへ入社した直後だったという。

「もともと人工知能の勉強していたのですが、会社に入ったらCGをやれと言われて。でも嫌ではなかったです。目の前でリアルタイムで動いているものを見て、なんだこりゃと驚きました」(橋本氏)

その後、橋本氏がゲーム会社のスクウェアに入社し、美麗な3DCGで知られるファイナルファンタジー7の開発に携わることになったのは今さら言うまでもないだろう。

NVIDIA Japan シニアディレクター・橋本和幸氏

映画分野にCGが一般的に活用され始めたのは、ゲームよりもさらに遅く、2000年前後の頃だったと樋口氏は振り返る。

「ガメラのときはNHKの『驚異の小宇宙人体』をやっていたチームに頼んで作ってもらいましたね。ガメラが飛ぶところと口から火を吐くところがCGです。あれが映画で3DCGをデジタル合成した始まりの時期だったと思います」

実は橋本氏も映画に携わったことがある。2001年に公開された映画版「ファイナルファンタジー」だ。スタジオを立ち上げるところから始めたため、完成までには約6年を費やしたという。

映画監督・樋口真嗣氏

これに樋口氏は「映画は時間がかけられない。制作費を回収できるキャスティングをするが、その人がスキャンダルを起こすと困るから、撮影から公開までの時間は延ばせないんです。私や山崎貴監督は最低でも6~8ヶ月はかけますが、理想としては1年はほしい」と映画ならではの裏事情を赤裸々に明かした。

ではそんなCGの魅力とはどこにあるのだろうか。