東京大学(東大)は4月19日、リチウムなどの希少元素を使用しない次世代電池の候補であるナトリウムイオン電池のプラス極を開発したと発表した。
同成果は、東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻 山田淳夫教授、大久保將史准教授らの研究グループによるもので、4月18日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。
リチウムイオン電池は、希少元素であるリチウムやコバルトを使用することから、代替技術の開発が急務となっている。なかでも、リチウムをナトリウムに置換したナトリウムイオン電池は、特に実現性が高いと考えられているが、その実現のためには、電流を蓄え放出する化合物の対(プラス極/マイナス極)が必要となる。プラス極については、鉄やマンガンなどの遷移金属の酸化還元反応により充電/放電を行う化合物が検討されてきたが、充電/放電が可能な電流量は物質が含有する遷移金属の量によって低く抑制されていた。このことは、電池が電力の供給を長時間行えない原因となっており、実用化の障害となっていた。
今回、同研究グループは、酸化物イオンの酸化還元反応で充電/放電するプラス極を発見した。具体的には、ナトリウムと遷移金属と酸化物イオンから構成される蜂の巣状の構造を持つ層状酸化物において、酸化物イオンの酸化還元反応により充電/放電が可能であることを見出した。
従来、このような反応を起こそうとすると酸素が乖離したり、結晶の構造が変化したりして安定な酸化還元反応は起こらないとされてきたが、詳細な化合物の解析を行ったところ、蜂の巣状の構造中で酸化物イオンと遷移金属が協同的な構造の歪みを生じることで、酸化物イオンの電子同士が強く相互作用するようになり、酸化還元を促進する化学的状態となっていることがわかった。
また、得られた反応を実際にナトリウムイオン電池のプラス極として応用した結果、遷移金属からのみ電子を取り出す従来型のプラス極に比べて1.4倍の電気量を蓄えることが可能であり、また、充電/放電を繰り返しても電池の特性は劣化せず、安定に利用できる反応であることがわかったという。
同研究グループは今回の成果について、今後、電気自動車などに搭載可能な高エネルギー密度の電池開発に大きく貢献することが期待されるとしている。