ソフトバンク プロダクト企画本部 商品企画統括部 スマートデバイス企画部 部長の石川 俊司氏。手に持つのはappbot LINKとHTC ReDipro。appbot LINKは遠隔で移動できるキャタピラ式カメラで、HTC ReDiproはスマホと連携して簡単に撮影できるカメラだ |
ソフトバンクは3月18日、宮城県仙台市の仙台駅前にIoT製品の体験スペース「TECH CAFE(テックカフェ)」をオープンした。ヘルスケアから監視カメラまで、さまざまなIoT製品を取り扱うスペースで、同店舗は東京・六本木と南池袋、大阪の心斎橋に次ぐ4店舗目、地方の中核都市としては初の開設となる。
IoTをテーマとするテックカフェだが、都市圏でもまだまだIoTというキーワードが一般化していない中で、なぜ仙台に店舗を設けたのか。同社プロダクト企画本部 商品企画統括部 スマートデバイス企画部 部長の石川 俊司氏に話を伺った。
IoT製品とは何かを感じ取れる場所に
石川氏によると、昨年12月にスタートした六本木店と心斎橋店は予想以上の関心を集めており、来店者も多い状況にあるという。そのため「(携帯ショップの)代理店を含めて、協力いただける環境ができつつあった」として、当初は年度内に2店舗の予定だったものを、4店舗目となる仙台にまで拡大した。
既存店舗では、来店時に展示商品を気に入ったら投票するボタンを用意したり、アンケート調査を行ったりしており、来店者の生の声、反応をフィードバックして配置する製品構成に生かしている。本来はスマートフォンの購入がコンバージョンとなるものの、現実としては楽しい場所止まりな部分もあると石川氏は苦笑いしつつも、「来ていただいたお客さまの9割が『チャレンジ姿勢を感じる』と評価していただいたほか、IoTに興味を持ち『またこの場所に来たい』と回答していただいたお客さまも9割いました」とのことで、一定の成果があるようだ。特に、他キャリアのユーザーもIoT製品ブース自体に興味を持って来訪するケースが通常より多いようで、「携帯ショップとして入るのではなく『何か面白いことをやってるぞ』と別の目的で入ってきていただける副次効果には眼を見張るものがあります」と喜びを見せる。
石川氏の部下にIoTのおすすめグッズを紹介してもらった。左は「Phonotonic」という製品で、このボールのようなものを振ったり投げたりすることで、独自のサウンドを奏でられる。真ん中は比較的知名度の高いウェアラブルデバイス「JAWBONE」。右のスマートウォッチは「ACTIVE POP」で、アクティビティをトラッキングできるものの、あくまで普通の時計のようにふるまうデバイスとなる |
スマートフォンが"同質化"することでラインナップに多様性が見られなくなったことから、近年の携帯ショップでは、さまざまなアクセサリや保険、名産品の販売といった携帯ショップから一歩離れた商材を並べることで、顧客との接点を確保しようという動きが見られる。保険や名産品の販売が悪いわけではないが、IoT製品は「スマートフォンが中心の世界で"サブキャラ"が必要になる時代が来る。そうした時に、携帯ショップとして、スマートフォンを説明できる人材がいなくてはIoT製品の世界観を説明できないし、スマートフォンとの親和性もある」と石川氏が話すように、スマートフォンの本質に近い製品として、取り扱う意義がある。
石川氏は、商品企画の部門としてIoT商品をどのように顧客へ届けるかにフォーカスして企画を進めてきた。ただ、IoTはキーワードとしてビジネスシーンで盛んに取り上げられるものの、実情として「成功事例がない」(石川氏)という。
「IoTはスマートフォンの『なんでもできます』状態ではなく、目的別に機能が限定されてハードウェアとして提供されており、使ってみないとわからない。ならば、使える環境を提供しようじゃないかとテックカフェを展開しました」(石川氏)
IoT製品は、家電量販店でも多く展開されているが、ヘルスケア製品であればヘルスケアコーナー、カメラ製品ならカメラコーナーと、目的別に配置が異なるため、スマートフォンを中心に利用する製品にもかかわらず、スマートフォンから遠い位置に製品が点在する。その問題を解決するため、スマートフォンを説明できるショップ店員がいる環境とあわせて、トータルにIoT製品を見て、楽しんで、知ることができる場としてテックカフェを用意した。
「まずは使っていただくことが大事です。ブランド知名度が上がれば、もっとこうしたテックカフェをさまざまな場所へ展開していきたいと考えていますし、発売前、開発中製品の展示も六本木店では行っています。ゆくゆくは、自分たちがイチから作ったIoT製品も世の中に提供していきたいですね」(石川氏)