九州大学(九大)は2月25日、第三世代有機EL発光材料(TADF材料)の実用化を担うスタートアップ企業 Kyuluxが、総額15億円の資金を調達したことを発表した。

今回、Kyuluxは、QBキャピタル、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルなどのベンチャーキャピタルや事業会社、および科学技術振興機構(JST)の「出資型新事業創出支援プログラム:SUCCESS」からの出資を含む総額15億円の資金を調達。また実用化に伴う技術の特許に関して権利者である九州大学らと許諾などを締結した。

TADF材料は、同大学 安達千波矢 主幹教授が、内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)において開発に成功したもの。レアメタルを使わずに、発光の励起子発生メカニズムにかかわる一重項と三重項励起状態のエネルギーギャップを小さくする分子設計により、電子を光へほぼ100%の効率で変換できる新しい有機発光材料で、低コスト・高効率発光を可能としている。また、蛍光材料を発光材料とする有機EL素子の発光層中に、TADF材料をアシストドーパントとしてドーピングすることにより、蛍光分子からのEL発光効率を100%まで向上させることに成功。これにより、高効率、低コストに加え、高純度の発色を実現する発光技術「Hyperfluorescence」が実現可能となった。

Kyuluxは今回、同大学からの基本特許の実施許諾などによってTADFの製造・販売を独占的に行うことが可能となったため、今後は同大学が論文等で公表している材料を中心に、大学などの研究機関へTADF材料を販売していく予定。また、第二世代のリン光材料で実用化できていない青色のTADF、Hyperfluorescenceの実用化を進めていくとしている。

有機EL発光の基本原理