関西学院大学はこのほど、高い発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料を開発したと発表した。

同成果は関西学院大学の畠山琢次 准教授らと、JNC石油化学 市原研究所の共同研究によるもので、2月12日(英国時間)に独科学誌「Advanced Materials」オンライン版で公開された。

スマートフォンなどの小型ディスプレイで実用化が進む有機ELディスプレイでは、発光材料として蛍光材料、りん光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料の3種類が利用されているが、蛍光材料は、発光効率が25~37.5%程度と低い。一方、りん光材料とTADF材料は、発光効率が100%に達する場合もありますが、いずれも色純度が低い(発光スペクトルの幅が広い)という問題がある。

ディスプレイでは、光の三原色である赤・緑・青色の発光を混合することによりさまざまな色を表現しているが、それぞれの色純度が低いと、再現できない色ができてしまい、画質が大きく低下してしまう。そこで、市販のディスプレイでは、発光スペクトルから不必要な色を光学フィルターで除去することで、色純度を高めてから(スペクトル幅を狭くしてから)使用している。そのため、元々のスペクトル幅が広いと除去する割合が増えるために、発光効率が高い場合でも、実質的な効率は大きく低下する。

今回、同研究グループは発光分子の適切な位置にホウ素と窒素を導入し、共鳴効果を重ね合わせることで、発光スペクトルの半値幅が28nmという世界最高レベルの色純度を持ちながら発光効率が最大で100%に達するTADF材料「DABNA」の開発に成功。「DABNA」はホウ素、窒素、炭素、水素というありふれた元素のみからなることや市販の原材料から短工程で合成できることから、有機ELディスプレイの高効率化と低コスト化が期待できるとしている。

同研究グループは、DABNAの開発を通じて有効性が証明された多重共鳴効果を利用した分子デザインによって、今後、さらに優れた特性を持つ発光材料を開発することも可能だとしている。

DABNAを用いた青色有機EL素子

発光スペクトルの比較