東北大学(東北大)は2月4日、グラフェンの超伝導化に成功したと発表した。
同成果は、同大学 原子分子材料科学高等研究機構 高橋隆 教授、東京大学大学院理学系研究科 一ノ倉聖 大学院生、長谷川修司 教授らの研究グループによるもので、1月29日付けの米科学誌「ACS Nano」オンライン速報版に掲載された。
グラフェン中の電子は、「ディラック・コーン」と呼ばれる特殊な電子状態を形成し、その結果“質量ゼロ”の状態を取ることが知られている。このため、グラフェン中の電子は非常に速い速度で移動することができ、その速度は半導体のシリコン中に比べ200倍以上速いことがわかっている。しかし、超伝導がグラフェンで発現するのかどうかは不明のままとなっていた。
今回同研究グループは、シリコンカーバイド(SiC)単結晶上にグラフェンを1枚ずつ制御して作製する方法を開発。同方法を用いて、炭素原子2層からなるグラフェン薄膜を作製し、その層間にカルシウム(Ca)原子を挿入したサンドイッチ状の2層グラフェン層間化合物(C6CaC6)を作製した。
同化合物の電気抵抗をマイクロ4指針電気伝導測定法を用いて測定した結果、-269℃で超伝導が発現していることを観測。また、層間に何も挿入していない純正2層グラフェンや、カルシウムの代わりにリチウム(Li)を挿入したリチウム層間化合物(C6LiC6)では超伝導が発現しないことも見出した。
同研究グループは今回の成果について、超伝導グラフェンを集積演算回路に用いた量子コンピュータへの応用など、超高速超伝導ナノ電子デバイスの開発へ大きく道を開くものであると説明している。