ルネサス エレクトロニクスは2月2日、自動運転を実現する車載コンピューティングSoC向けの動画像処理回路を開発したと発表した。

詳細は2016年1月31日から米サンフランシスコにて開催されている半導体の国際学会「ISSCC 2016(International Solid-State Circuit Conference 2016:国際固体素子回路会議)」にて発表された。

自動運転を実現するために必要なSoCでは、車載情報システムと安全運転支援システムを統合して並列に処理する必要があり、中でも車載カメラから送られる動画像データを低遅延で処理することは安全運転支援を実現する上で重要となっており、かつ同時に自動運転制御も遅滞なく安定して実行する必要がある。今回開発された動画像処理回路技術は、圧縮符号処理を担うストリームプロセッサとそれ以外の画像処理を担う濃ーデックプロセッサの間にFIFOを配置し、同期動作をさせるモードを搭載することで、フレームごとのデータ量がほぼ等しい動画像圧縮データに対応した。また、コーデックプロセッサからフレーム処理の途中で16倍数ラインの処理が完了したことを知らせる割り込みをCPUに出力する機構を設け、フレーム処理の完了を待たずに後段の歪み補正処理を開始できるようにもしたとのことで、これらの技術を活用することで、16nm FinFETプロセスを用いた試作品では、動画像圧縮データの受信から動画像伸張処理と歪み補正処理の完了までを同社28nmプロセス比で40%減となる70msを実現したとする。

また、CPUとGPUに負荷をかけることなくリアルタイムかつ低消費電力で動画像処理を行うために、17個6種類の動画像処理プロセッサを開発。16nm FinFETプロセスでの試作品では、同社28nmプロセス品比で3倍となるフルHD 12チャネルの動作を実現したという。

さらに、フルHD 12チャネルでの画像処理を行う場合、メモリへのデータアクセスが性能のネックおよび電力消費に影響を及ぼすが、安全運転支援システムの動作を阻害しないためには動画像処理で消費するメモリ帯域を押さえる必要があるため、メモリに格納する画像データを圧縮することで、メモリ帯域の削減を実施。具体的には可逆圧縮と非可逆圧縮を画像処理の特性に合わせ適切に配置することで、典型的な動画像処理フローにおいて50%のメモリ帯域削減を実現したほか、小サイズデータのアクセスが多く発生する動画像伸張処理に対しては、キャッシュを利用したアクセスサイズの拡大を図ることで実効的なメモリ帯域を70%削減することに成功したとのことで、16nm FinFETプロセスの試作品では、バス上を流れるデータ量の減少に応じ消費電力が同社28nmプロセス品比で20%削減されたほか、消費電力はフルHD 12チャネルで同60%減となる197mWで実現できることを確認したとする。

なお同社では、今回開発した動画像処理回路について、膨大な動画像処理をCPUとGPUに負荷をかけることなくリアルタイムかつ低消費電力、低遅延で行うことで、車載情報システムおよび安全運転支援システムを統合する車載コンピューティングシステムを実現するものと説明しており、今後の安全・安心で快適なクルマ社会の構築につながるものであるとコメントしている。