東京大学(東大)は12月22日、4個の中性子だけでできた原子核の共鳴状態「テトラ中性子共鳴」を発見したと発表した。
同成果は、東京大学 原子核科学研究センター 下浦享 教授、理化学研究所仁科加速器研究センター 木佐森慶一 日本学術振興会特別研究員、上坂友洋 主任研究員らの研究グループによるもので、2016年1月29日付けの米科学誌「Physical Review Letters」に掲載される予定。
今回同研究グループは、エネルギー1500MeVの8Heのビームを液体ヘリウム4Heに照射し、二重荷電交換反応により生じる8Beから崩壊する2つのα粒子を、SHARAQ磁気分析装置を用いて精密分析。天然に存在する安定核を用いた通常の核反応では、ビームが持つ運動エネルギーを内部エネルギーに転換させる必要があるため、生成核へ大きな衝撃を与えるが、不安定核8Heの大きな内部エネルギーを用いることでほとんど衝撃を加えず、実験室中でほぼ静止した4つの中性子を生成し、共鳴状態「テトラ中性子共鳴」を発見した。
発見された共鳴は、3つの中性子に同時に働く「三体力」を無視した従来の手法による理論的解析からは説明が困難なものであり、逆に共鳴のエネルギーはこの三体力の強さに制限を与えるものとなる。さらにこの三体力は中性子物質の状態方程式を決定づけるパラメータであり、今回の発見は、主に中性子から構成される「中性子星」の構造解明への道をひらくものと期待されている。