科学技術振興機構(JST)と理化学研究所(理研)および京都大学(京大)は12月2日、新たに開発した半導体ポリマーを用いることで、有機薄膜太陽電池の光エネルギー損失を無機太陽電池並みまで低減することに成功したと発表した。
同成果は、理化学研究所 創発物性科学研究センター 尾坂格 上級研究員、瀧宮和男 グループディレクターと京都大学大学院 工学研究科 大北英生准教授らの研究チームによるもので、12月2日付けの英科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載される。
半導体ポリマーをp型半導体材料注として用いる有機薄膜太陽電池(OPV)は、次世代の太陽電池として注目されている。しかし、吸収した太陽光エネルギーを電力に変換する際に失うエネルギー(光エネルギー損失)が0.7~1.0eVと、市販のシリコン太陽電池などの無機太陽電池が0.5eV以下であるのに対して非常に大きい値を示すため、高効率化に向けて課題があった。
今回、同研究チームは「PNOz4T」という半導体ポリマーを新たに開発。PNOz4Tを用いて作製したOPVは1.0Vの電圧を出力し、従来のものよりもはるかに高い値となった。この結果、PNOz4T素子の光エネルギー損失は約0.5eVと無機太陽電池並みに小さい値となり、またエネルギー変換効率は約9%と、光エネルギー損失が小さい系においては最高レベルのエネルギー変換効率を示した。
PNOz4Tの性質を最大限に引き出すことができれば、実用化レベルのエネルギー変換効率15%も実現可能なため、同研究チームは2016年度中での12%達成を目指すという。