宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月27日、2015幎床䞭の打ち䞊げを目指しおいるX線倩文衛星「ASTRO-H」をプレス向けに公開した。今幎科孊芳枬を終了した「すざく」(ASTRO-EII)の埌継機で、重量は1.7トンから2.7ぞず倧型化。芳枬性胜も匷化されおおり、すざくに比べ、10100倍も暗い倩䜓の分光芳枬が可胜になった。H-IIAロケットにお、皮子島宇宙センタヌより打ち䞊げられる予定。

公開されたX線倩文衛星「ASTRO-H」。打ち䞊げ時の高さは玄8m

JAXAの高橋忠幞・ASTRO-Hプロゞェクトマネヌゞャ

日本はこれたで、「はくちょう」(CORSA-b)、「おんた」(ASTRO-B)、「ぎんが」(ASTRO-C)、「あすか」(ASTRO-D)、「すざく」ずいった5機のX線倩文衛星を開発しおおり、ASTRO-Hで6機目。X線倩文孊は比范的新しい孊問であるが、日本は黎明期から取り組んで倚くの成果を䞊げおおり、JAXAの高橋忠幞・ASTRO-Hプロゞェクトマネヌゞャは「X線倩文孊は日本のお家芞」ず蚀い切る。

ASTRO-Hの抂芁。4皮類6台の芳枬装眮ず、4本の望遠鏡を搭茉する

各芳枬装眮の抂芁。硬X線の領域では初めお集光撮像を実斜する

電磁波の䞭で、人間の目で芋るこずができる領域が可芖光であるが、党䜓からすればそれはほんの䞀郚。宇宙は我々には"芋えない光"で溢れおいる。そのために、電波や赀倖線を䜿った芳枬も行われおいるのだが、X線は䞻に、数癟䞇床から数億床ずいう、超高枩の物質から出おいる波長。぀たりX線芳枬を䜿えば、宇宙の䞭で激しく掻動䞭の領域の様子を調べるこずができるずいうわけだ。

宇宙からは様々な波長の電磁波が届いおいるが、地衚たで到達できるのは䞀郚。X線は宇宙で芳枬するしかない

これはケンタりルス銀河団の芳枬画像。可芖光(å·Š)ずX線(右)では、党く異なる䞖界が芋えおくる

そういった掻動領域の代衚栌はブラックホヌルだ。最新の研究では、銀河は誕生したずきから䞭心にブラックホヌルがあり、ずもに進化しおきたらしいずいうこずが分かり぀぀ある。しかし、その進化のメカニズムはただ分かっおいないこずも倚く、埓来のX線倩文衛星より広い波長域を高感床で芳枬できるASTRO-Hを䜿っお、謎を解明するこずが期埅されおいる。

ASTRO-Hの特城は、分光胜力の高さず芳枬できる゚ネルギヌ垯域の広さ。広い波長域を高感床で芳枬するこずが可胜だ

ASTRO-Hによる芳枬をシミュレヌト(青)。既存の衛星(黒)では山にしか芋えなかった郚分が、より现かく分かるように

ASTRO-Hには4皮類6台の芳枬装眮が搭茉されるが、その目玉ず蚀えるのは「軟X線分光怜出噚」(SXS)だ。これは日米が共同開発した装眮で、「マむクロカロリメヌタヌ」ず呌ばれるセンサヌを䜿い、受光したX線光子の゚ネルギヌを超粟密に蚈枬する。゚ネルギヌが分かれば波長が分かるので、ドップラヌ効果を利甚しお、察象倩䜓の動きたで芋るこずができるようになる。

これが「軟X線分光怜出噚」(SXS)。倖郚から䞞芋えになっおいるのは、攟射で熱を逃がすためだ

装眮の䞊偎には、X線を通すための穎が開けられおいる。ASTRO-Hは、それ自身が巚倧な望遠鏡なのだ

SXSのキヌ技術ずなるのは冷华機構。マむクロカロリメヌタヌでは、X線光子が玠子に圓たったずきにごく僅かに枩床が䞊がるこずを利甚しおいるので、玠子を極䜎枩に維持する必芁がある。そのため冷媒ずしお液䜓ヘリりムを搭茉するのだが、同様の芳枬装眮を搭茉したすざくでは、打ち䞊げから1カ月でこの液䜓ヘリりムを党量喪倱するずいう䞍具合が起きおしたい、芳枬できなかったずいう経緯がある。

SXSの原理。X線光子1぀を怜出する高い感床を実珟するためには、絶察零床近い冷华が必芁ずなる

玠子は6×6ピクセルの構造になっおおり、かなり荒いものの、画像ずしお認識するこずが可胜

絶察枩床0.06床(0.06K)を実珟するために、すざくの「X線埮少熱量蚈」(XRS)では、倚段の冷华システムを搭茉しおいた。たず機械匏の冷凍機で100Kたで䞋げ、さらに固䜓ネオンで17K、液䜓ヘリりムで1.3Kたで冷华。その枩床からの仕䞊げには、断熱消磁冷凍機(ADR)ず呌ばれる装眮が䜿われおいる。液䜓ヘリりムは30リットル(4kg)搭茉。気化熱による冷华のため蒞発しお埐々に枛少するが、2幎以䞊は持぀はずだった。

倖郚からの熱の流入を抑えるため、XRSは真空断熱容噚に栌玍。そこにヘリりム排気匁ず真空容噚排気匁が付いおいる構造だった。䞍具合の原因ずなったのは、このヘリりム排気匁が衛星の構䜓内郚に蚭眮されおいたこず。排気されたヘリりムが真空断熱容噚に入り蟌み、断熱性胜が劣化。するず熱流入が増え、ヘリりム蒞発量も増えた結果、さらに断熱性胜が劣化するずいうルヌプに陥っおしたった。

すざくの䞍具合の原因ずなった構造(2006幎に宇宙開発委員䌚に提出された資料より)

わずかな量のヘリりムが真空断熱容噚に入っただけでも臎呜的だずいう知芋が無かったために起きた䞍具合だった。そこでASTRO-HのSXSでは、この察策ずしお、ヘリりム排気匁ず真空容噚排気匁をずもに構䜓倖郚に蚭眮。たたネオンタンクより倖偎を担圓した日本ず、その内偎を担圓した米囜の間のコミュニケヌション䞍足も芁因ずされたため、今回は党おの蚭蚈䌚議に米囜偎も参加したそうだ。

構䜓の倖偎に蚭眮されたヘリりム排気匁。奥偎も同じようになっおいる。真空容噚排気匁は反察偎の面にあるずか

SXSの熱は、倧きなラゞ゚ヌタ(銀蒞着テフロン)から攟熱。衚面にヒヌトパむプが貌られおいるのはちょっず珍しい

なおSXSでは、仕組みもXRSから倉曎されおおり、ネオンは䜿わない。機械匏の2段スタヌリング冷凍機(2ST)で2030Kたで䞋げ、次にゞュヌルトム゜ン冷凍機(JT)で45Kに冷华。液䜓ヘリりムで1.2K以䞋にしお、ADRで最終的に0.05Kにたで䞋げる。すざくで実珟した0.06Kは、宇宙空間で人工的に䜜り出された枩床ずしおは䞖界で最も䜎いものであったが、ASTRO-Hが蚈画通り0.05Kを達成すれば、蚘録の曎新ずなる。

そのほか搭茉する芳枬装眮は、軟X線撮像怜出噚(SXI)、硬X線撮像怜出噚(HXI)、軟ガンマ線怜出噚(SGD)。衛星の打ち䞊げ時の高さは8mほどだが、HXIのために甚意された硬X線望遠鏡(HXT)の焊点距離は12mもあるため、軌道䞊で䌞展匏のブヌムを展開。その先端にHXI×2台を眮き、長い焊点距離を確保する。このずき、衛星の党長は玄14mにもなる。

ASTRO-Hの暡型。軌道䞊ではこのようにブヌムを䌞ばし、硬X線の12mずいう焊点距離を皌ぐ

暡型を䞊から芋たずころ。䞊䞋の2本は軟X線望遠鏡(SXT)で、巊右の2本が硬X線望遠鏡(HXT)

打ち䞊げ日はただ公衚されおいないが、近日䞭に皮子島ぞ茞送されるずいう。打ち䞊げ埌、1カ月1カ月半の初期運甚、7カ月半の詊隓芳枬を経お、定垞運甚を開始する予定だ。高橋プロマネは「ブラックホヌルから銀河たで、宇宙がどうしお珟圚の姿になったのかずいうずころに興味がある」ず述べ、ASTRO-Hによる芳枬開始に期埅を寄せた。

ファンがあったので驚いたのだが、もちろんこれは地䞊での冷华甚。空気がない宇宙空間では意味がない

良く芋るず、先端ず本䜓で倚局断熱材(MLI)の色が違う。担圓メヌカヌが違ったりするず良くあるこず

奥偎の4本が望遠鏡。手前の小さな2本は姿勢制埡に䜿甚するスタヌトラッカ。いずれも蓋がしおある

倪陜電池パネルは片翌3枚×2翌の蚈6枚。向きは倉えられないが、倪陜の方角が±30床たでなら問題無い

右はSバンドのアンテナで、巊はXバンドのアンテナ

姿勢制埡スラスタ(RCS)。4カ所×2基の蚈8基が搭茉されおいる