11月10日より12日の3日間、「ARM TechCon 2015」が恒例のSanta Clara Convention Centerで開催されている。初日の基調講演で、3つの新発表があったので取り急ぎお伝えしたい。
ARM Cortex-A35
まず最初の発表は64bitの新しいコアである「ARM Cortex-A35」である。Cortex-A35はCortex-A7を置き換える位置づけとされており、同等以下の消費電力でより高い性能を実現するとしている(Photo01)。また、きわめて広い動作周波数/消費電力のスケールを実現しており、100MHz駆動では消費電力は6mWでしかない(Photo02)。またコアのエリアサイズは非常に小さく、28nmで1コアの最小構成だと0.4平方mmでしかない(Photo03)。ちなみにロードマップ(Photo04)にあるように、Cortex-A35はCortex-A53と並ぶ形で提供されることになる。
Photo01:数字はいずれもCortex-A7比 |
Photo02:ちなみに1GHzでは90mWだが、別に1GHzで打ち止めという訳ではなく、動作周波数的にはCortex-A53と同じところまで引き上げることが可能だそうだ |
Photo03:構成そのものは自由に選べるほか、big.LITTLE構成にすることも可能 |
Photo04:ちなみにロードマップにある、Cortex-A72の後継となる"Artemis"については「まだ話すには早すぎる」ということで詳細は一切公開されなかった |
ARMv8-M
2つ目の発表はMCU向けの新しい命令セットである「ARMv8-M」である。主要な違いはTrustZoneの搭載である(Photo05)。もっともTrustZoneの実装方法はCortex-A向けのものとは異なり、TrustZone専用コプロセッサを搭載するわけではなく、一種のモード切替で実装される形になる。なのでTrustZone内部の命令は既存のTrustZoneとは異なるものになり、互換性はない。ちなみに基調講演では触れられなかったが、このARM V8-Mに対応する形でAMBA 5も発表された。
またこのTrurtZoneの実装にあわせて、新しく「CryptCell」も発表された(Photo06)。これは通信の安全には付き物である暗号化アクセラレータやTRNG(真乱数発生装置)などのハードウェアと、これをサポートするソフトウェアの構成からなるとの事だった。
ちなみに今回はあくまでアーキテクチャの発表であり、具体的なMCU IPの発表ではない。すでにARM V8-Mのアーキテクチャライセンスは可能だそうだが、今のところそれを要求している顧客はいないとの事だった。
mbed OS 3.0
これは昨年からアナウンスされている話であるが、今回「mbed OS 3.0」が正式に公開された(Photo07)。
またmbed Device Connectorが利用可能になった(Photo08)ほか、2016年には自分で作成したデバイスやソフトウェアを配布するサービスがスタートすることも明らかにされた(Photo09)。
以上が基調講演における新発表である。各々の詳細については別途レポートとお届けする予定だ。