ストレスチェック制度の目的は?

鳥越氏は、ストレスチェック制度のポイントとして次の3点を挙げた。

  • 50名以上の事業場について、医師・保健師などによる全従業員へストレスチェックを実施し、実施した医師・保健師より従業員へ直接チェック結果を返却

  • 高ストレス状態かつ申し出を行った従業員への医師による面接指導の実施

  • 面接指導の結果に基づき、医師の意見をふまえて必要に応じた就業上の措置

これは、法律で定められている基本的なポイントとなる。しかし、鳥越氏も参加していたという法案公布後の審議会では、法律で触れられていない点に対して付け加えを行ったという。鳥越氏は「ストレスチェックを実施するだけでなく、ストレス問題を改善することが重要」とし、さらに3つのポイントについて説明した。

まず、「企業の集団分析」である。ストレスチェックの結果を部署ごとに分析し、企業は職場環境改善のために活用するよう求められている。集団分析は努力義務とされているが、鳥越氏は「"努力義務"とは、"努力することが義務"なので、これはほぼ義務ということ。ストレスチェックを行っただけでは、改善されない。改善するためにはストレスチェックの結果を利用し、企業が努力することが必要」と説明した。

2つめは、「相談窓口の案内」である。ストレスチェックを行った結果、高ストレス判定を受けた従業員は、その後会社に対して医師による面接指導の申し出を行う必要がある。「高ストレス状態の人が、果たして自分で申し出をするものか?」と鳥越氏は疑問を投じる。そこで、医師面談とは別にカウンセリングなどが受けられるような環境の整備をすることが、推奨されている。

3つめは、「労働基準監督署への報告」である。企業はストレスチェックの実施日・チェックを受けた人数・フォロー状況を、労働基準監督署に報告することが義務付けされている。「この報告内容によって規制や取り締まりは行わないとされているが、十分に注意した方がよい。政府はこの報告内容をブラック企業対策の参考にすると考えられる」と鳥越氏は促す。

「ストレスチェック義務化の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止が主な目的であって、ストレスチェックをすることが目的ではない。この目的のために、ストレスの原因となる職場環境の改善を行うことが、企業が求められている対応である」(鳥越氏)

ストレスチェック制度のフロー図(厚生労働省「改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について」をもとにアドバンテッジ リスク マネジメントが作成)