都会のまんなかの広場に巨大な「つみき」が現れて、道行く人の視線を奪っている。

建築家・隈研吾氏が自身のデザインした「つみき」を用いてディレクションした展示。サイズの異なるつみきを弧を描くように並べた「つみきのトンネル」(左)、つみきで作ったピラミッド「つみきのやま」が設置されている(右)

これは、10月16日~11月3日まで開催される、デザインをテーマとしたイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」(東京ミッドタウン デザイン タッチ 2015)のメイン展示「つみきのひろば」だ。東京ミッドタウンの芝生広場いっぱいに、建築家・隈研吾氏が、森林保全団体とコラボレーションしてデザインした「つみき」を用いた作品が展開されている。本稿では、プレス向け内覧会で作品をバックに隈氏自らが語った作品の解説と会場の様子をお届けする。

建築家・隈研吾氏

隈氏がデザインした「つみき」は、クラウドファンディング「Makuake」で支援を募っていた製品。今回の展示には製品版をそのまま大きくしたサイズの物が使われているほか、イベントの舞台となる東京ミッドタウンでの先行販売が行われる。

「つみき」の開発には長い時間を要したといい、当初は表参道にある「サニーヒルズ」(台湾発のパイナップルケーキ店)など隈氏の建築にも通ずるところのある、棒を組んであそぶ物も検討していたとのこと。しかし棒を組むのは子供にとっては難しすぎることを考慮して、現在の板を組み合わせた三角形になったのだという。

また、隈氏は建物の中に木の素材を多く用いることでも知られているが、そうした自身の表現を「社会を通じて木を再生させる」取り組みであると語った。「木を使うことによって生まれる"感じの良さ"ではなく、その裏にある社会を見る」ことが目的なのだという。

夜間は作品のライトアップが行われる

そのほか、実際につかう材料としては見栄えの良い木材をスライスした「突き板」は"きれいになりすぎる"ため、丸太から切り出す「無垢材」のほうが、「においや節のあるところ、質感などが人間に訴えかけてくる」ので好ましいとコメントした。同氏の近作では、「TOYAMAキラリ」(同施設内の富山市ガラス美術館)でも、富山県産の木材で作られたルーバーを採用しているのが象徴的だ。

現在進行中の新国立競技場コンペなど、国内外で大きなプロジェクトに関わる隈氏だが、「海外の案件でも、木の使用には前向きな傾向が強い」と言及。しかしながら、施工技術の差により、日本で行うような仕上がりはなかなか実現できないという。「木取りを含めたシステムは完璧で、日本の宝です」と、その技術力を称えていた。

つみきを巣箱の屋根として活用した、デザイナー・鈴木啓太氏による「BIRD HOUSE STAND」

ガーデナー・齋藤太一氏による、木を用いた体験エリアを制作「Relax & Joy tsumiki garden」

美術家・ミヤマケイ氏と建築家/美術家の佐野文彦氏による展示「木ヲ見て森ヲ見ズ 森ヲ見て木ヲ見ズ」

なお、この「つみきのひろば」には、隈氏のつみきを使った若手クリエイターによる「つみきのてんじ」も設けられ、期間内の週末限定だが、実際につみきで遊べるゾーンも開放される。六本木という都心の中の都心で木と触れあう、貴重な機会に出かけてみてもいいかもしれない。